誕生日
□#丸井ブン太生誕祭2018
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#丸井ブン太生誕祭2018
今日は俺の誕生日。
学校に行けばお菓子がたんまり貰える特別な日だ。
なのに、俺は寝坊しちまった。
ま、今日の主役は俺だから許されんだろい!!
朝練をしているはずの真田から電話がかかってきた。
丸井「もしもし」
真田[もしもしではない!]
は?電話の一言目はもしもしってきまってんだろい。
いくら遅刻してるからって、もしもしくらい言わせろい。
真田[早く来い!部が大変なことに…]
丸井「?どういうことだよい??」
いつも大変なことになってるけど、真田の焦りようからして今回はかなりやばそうだぜい…。
真田[赤也が幸村に試合を申し込み、幸村はそれを承諾して、朝練が始まったと同時に試合も始まった。そして…幸村が優勢になるにつれて赤也が悪魔化して……]
珍しく、いや、初めてかもしれない。
真田がハッキリと物を言わないのは。
丸井「…え、そ、それで…?」
真田[……。]
恐る恐る聞いたけど、真田は相変わらず黙ったまま。
聞くのは怖かったけど、俺もテニス部の一員だし、何より幸村君と赤也がどうなったのか心配だ…。
丸井「真田!」
真田[赤也が……幸村を殴ったんだ。…ラケットで。]
丸井「…は?ゆ、幸村君は…」
真田[…倒れて、病院に運ばれた。]
赤也が幸村君を殴った??
気絶させるほど…??
丸井「え?え、は?意味わかんな…何で赤也が幸村君を殴んだよい!!そんな…あるわけ…」
真田[だから!さっき言った通りだ!]
丸井「うそなんだろい…?真田」
事が大きすぎて今まで忘れてたけど、もしかしたら、俺が今日誕生日だから嘘をついている、という希望に縋った。
けど、そんな俺の希望はいとも簡単に断ち切られた。
真田[こんな時に俺が嘘を言うわけがないだろう!]
丸井「え…だって…」
真田[いいから早くお前も来い!病院にみんないる!!]
丸井「ちょ、真田!!」
一方的に切られた電話の画面のまま、腕をだらんと下げて、空を仰ぐ。
丸井「なんで…俺の誕生日に…赤也と幸村君が…」
ほんの少しだけ泣いて、病院に急ぐ。
幸村君…!!
頼むから無事でいてくれ…!!!
前からくる人を避けながら、全速力で病院へ走る。
迷惑な目で見られても、そんなのもうどうでもいい。
丸井「幸村君!!!!」
病室のドアを勢いよく開け、大きな声で名前を呼ぶ。
ほら、こいよ真田、静かにしろって言え…。
俺が待っていた言葉はなく、みんなはどこにもいなかった。
幸村「丸井…?」
丸井「ゆ、幸村君……。」
頭にぐるぐると巻かれた包帯に、唖然とする。
本当に、嘘じゃなかった。
本当に赤也が幸村君を…
丸井「大丈夫…なのか?」
幸村「ああ、聞いたんだね。大丈夫…っていえば嘘になるけど…。」
幸村君は静かに笑いながら言った。
幸村「…そういえば、今日は丸井の誕生日だよね?」
丸井「あ、ああ。」
もう、そんなものどうでもいい。
今日なんて無かったらいいのにとすら思う。
幸村「ごめんね、せっかくの誕生日をこんな…」
申し訳なさそうに笑いながら、もぞもぞと起き上がろうとする幸村君。
それだけで胸が痛い。
丸井「いや、いいから。幸村君、寝てろい。」
幸村「良くないよ。1年に1度しかないだろ?だから…」
まぁそうだけど、それでも今のこの状況でお祝いなんて…。
幸村「だからね!丸井!!」
急にガバッと起き上がって叫んだ幸村君に付いていけずにただ見ていた。
「誕生日!!おめでとう!!!!」
パンッ!という病院にはとても似合わないクラッカーの音が次々と鳴る。
後ろを向くと、真田、赤也、ジャッカル、柳、仁王、柳生、が笑って立っていた。
丸井「…え」
切原「丸井先輩!!誕生日おめでとうございます!!!!」
丸井「赤也…」
赤也のジャージには血なんて一滴も付いてなくて。
仁王「全部嘘じゃ。」
ニヤリと笑う仁王を見て、ああ、全部コイツのシナリオだったんだと納得。
全部嘘だとわかった途端、全身から力が抜けた。
柳「大丈夫か?」
丸井「幸村君…よかった、本当に。」
幸村「ブン太、泣かなくていいのに。」
俺もまだまだ子供なんだなぁ。
…んまぁでも、今日くらいは甘えてもいいか。