NATURALLY 【完結】
□NATURALLY III
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NATURALLY III
どさっ。
真田くんはその場に倒れた。
「これ…幸村くんの試合のとき、相手がいつも倒れるのと同じ…?私、遠くからしか見てないから、いつも疲れて倒れちゃってるのかと思ってました。…けど、改めて近くで見ると、何か動けるのに、動けなくなってるって感じですね。 」
そう言い終わると、柳くんと幸村くんは2人して驚いていた。
柳「…ほう。田中は観察力があるな。」
『田中』
何気なく会話文に含まれた単語が頭に響いた。
私のこと、知っててくれたんだ…。
嬉しくなり、頬が緩む。
幸村「そうだね。…そういえば、あのとき、何だか気分が良くなったんだ。あれは、能力を使っていたのかい?」
柳くんが名前を呼んでくれたことで、すでに頬が緩んでいた私に追い討ちをかけるように、幸村くんが私のことを思い出したなんて言うから、私は今、とても締まりのない顔をしているだろう。
幸村「そうだ。そろそろ、真田を元に戻さないとね。」
「あ、そうですね。」
忘れてた。
ごめんね、真田くん。
ありがとう…。
幸村「…君、イップス効かないようだけど、治せたりするのかい?」
誰かの能力の効果を、無効化することってことだよね…。
出来るのかな。
「どうだろ…。分かりません。」
柳「せっかくだし、やってみたらどうだ?」
柳くんがそう言うので、やってみる。
もともと、真田くんには、私のためにイップスになっちゃって悪いと思ってるし、早く戻してあげたい。
私は、そっと倒れてる真田くんの手を掴んだ。
真田「…。」
「…。」
何も、起きない…?
誰かの能力の効果を無効化することは出来ないってことかな。
私が癒す場面を初めて見る2人は、時間がかかるものだと思っているのか、何も言わず、じっと見ている。
「…出来ないみたいです。やらせてもらったのにごめんなさい。」
幸村「ふふ。少し安心したよ。部員にイップスを治せると知れたら、威厳がなくなりそうだ。」
柳「(いや、それはないだろう。)謝ることはない。」
幸村くんが真田くんを治し、少し気力がなくなった真田くんを癒す。
真田「ほう。これがお前の能力か。」
『すごいな。』と言う真田くんの顔で本心で言っているのが分かった。
嬉しい。
今まで、能力のことは隠してきたから、誰かに褒められるなんて初めて。