忘れかけてたモノ 【完結】

□忘れかけてたモノ 3
1ページ/2ページ

忘れかけてたモノ 3/1


……思ったより精神面がやられてたみたい。
正直あそこまでひどいとは思ってなかった。
何だろう、何が彼をあそこまで追い詰めているんだろう。

私に出来ること、何かないかな。

私に出来ること、それは考えること。
彼について、考えて考えて考え抜いて彼を元のような強い彼にすること。
……ううん。
強くなるのは彼自身。
私はそのお手伝いをするだけ。

彼について考えるにも、情報が足りないな。
1度、立海大附属中に行ってみないと。
生徒、先生、テニス部員に聞いて回りましょう。
そしたら、彼を縛り付けている何か、彼を追い詰めている何かが分かるかもしれない。

「……考えるより先に行動。」

これが良いのか悪いのか分からないけど、一応私のポリシー。

てくてくと、迷うことなく足を進める。
なぜ迷わないのかは、立海大附属中学校は、私の学校の通学路にあるから。

そうそう。
幸村くんはとても人気で、ファンクラブがあるんだって。
まぁ、そんなこと私にとってはどうでもいいけど。

「すみません、ここの学校の幸村精市くんって、どのような生徒でした?」

女子「えっ、あ、テニス部の部長さんで、優しそうな雰囲気で……あの……。」

「お手数掛けました。ありがとう。」

後ろで女の子が何か言いかけていた気がするけど気にしない。
普通の生徒には名乗りたくないから。

というか、部長、だったんだ。
2年生のくせに。
それは色々重くのしかかってくるだろうな。
プレッシャーやらプライドやら。

でも、それだけ……?

それだけじゃない気がしてまた歩き出す。
たどり着いた先は職員室。

「失礼します。少しお聞かせ願いたいことがありまして……。」

ちょっと不審がられたけど上手く聞き出せた。
にしてもセキュリティ緩いな。

先生や生徒たちによると、この学校は『文武両道』『常勝』というスローガンを掲げているらしい。

……これだ。
彼を縛り付けているもの。
それはいつの間にかこびり付いた『常勝』という文字。
『楽しい』という感覚の麻痺。
『文武両道』で、部活の疲れを癒せない。
『部長』という立場の重み。

これらが重なり合って彼を蝕んでいる。
そしてそれを誰にも言えず溜め込む。
彼の100あった精神力を20以下にしている。

私に、何が出来るだろう。

また振り出しに戻った。
けれど今度は情報がある。

……テニス部に行こう。

そう心に決めてテニスコートへ向かう。
多少迷ったけど、歩いている途中で立海のジャージを来ている人を見つけて付いて行った。
やっぱりテニスコートは大きかった。
そしてテニスコートを囲う女子たちも多かった。

女子「真田くーん!幸村くんはー?」

女子「今日もおやすみなのー?」

立海のテニス部はファンに秘密にしているの?
私が風の噂で聞いたんだから、彼女たちだって知ってるんじゃないの?

「さすがだね、今も昔も。」

変わらぬ彼の人気さにため息を付く。
そしてそのままジャージの子に付いて行って、部室らしきところに着いた。

「んー……。どうしようか。」

彼の仲間達は練習中だし、これから部員がここにくる可能性は低い。
でも、女子たちと一緒にフェンスの前に立って練習を見るなんて嫌だ……。

部活終わるまで、ここで待ってよう。

丸井「あーんた、ここで何やってんだ?うちの生徒じゃねぇみたいだし?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ