野良猫【完結】

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初めて書いた恋愛小説。
あれは本当にひどいものだった。
恋愛小説には程遠い、俺の気持ちを書いたただの恋愛日記みたいだった。

恋愛日記を恋愛小説に変えられたのは、謙也のおかげ。
謙也が俺に言った言葉が、俺を変え、俺とあいつの関係を変えた。






昨日は執筆に追われて田中さんのとこ行けへんかったなぁ。
毎日行く言うたんに、初日から破ってもうた…。

謙也「白石、お前こまちちゃんのこと好きやろ。」

廊下を曲がると謙也がいて、腕を掴まれた。
衝動と驚きで、持っていた荷物を全部落としてしまった。

白石「な、何や、謙也か。それより、何言い出すんや急に…。」

落とした荷物を急いで荷物を拾い上げた。

謙也「動揺しすぎやろ…。それにな、白石が恋しとることくらい四天宝寺中全員が知ってるで?」

白石「?!」

どこから出したのか、謙也は俺が今書いている恋愛小説『野良猫』を手に持っていた。

白石「それは…小説やん。今までのもフィクションやったし、今回も…」

謙也「気付かんと思っとんのか?何年お前と一緒にいると思っとんねん!」

白石「1年とちょっ…」

謙也「そんなん聞いてへんわ!」

白石「えぇー…。」

もう本題が何だかよく分からなくなってきていた時だった。
財前がこっちに歩いてきた。

財前「先輩ら、さっきからうるさいっスよ。部長の片想いなんてみんな知ってんスから、騒がないでもらってええですか?耳障りなんで。」

白石「な、何や財前まで…。」

財前「あんなん書いてたら誰でも分かります。」

そう言って財前は自分のクラスに戻っていった。

謙也「な?…それより、これからどないするん?告白して振られたんやろ?まさか、諦める訳ないやろな?」

白石「それは…。」
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