野良猫【完結】

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全国大会の試合中でも、俺の頭の中は、あいつのことばっかだったような気がする。

結局、決勝では出なかったんだけど。
その後、大阪に帰ってからはイライラモヤモヤしっぱなしだった。






「私、神奈川から越してきたんです。」

謙也「へぇ。こまちちゃんて、神奈川から来たんや!俺のいとこはな…」

なぜ、こんなことになっているのかというと、全国大会から帰ってきた日、駅に田中さんがいて、謙也に急かされ紹介したのだ。

そして、謙也がランチの予定を決め、それが今日、今に至る。

「そういえば、白石さんは、テニス部だったんですね!そんなに細いのに、大丈夫なんですか〜?」

少しからかうように聞いてくる。
なぜか分からないけど、気が重い。

白石「ちゃんと筋肉ついてるし、田中さんが思ってるほど細くないです。」

少しそっけなかったか…?
いや、でも自分ではどうすることも出来へん。

俺が無駄な心配をしていると、彼女は突然俺の腕を掴んだ。

「本当だ。思ったより太い。すごい。鍛えてるんですね。」

未だにむにむにと触り『大変そう』とこぼす。
俺は情けなくも動けずにいた。

謙也「ちょっ!俺の方がすごいで?!」

謙也は慌てて、自分の腕を差し出す。

謙也の腕も、俺のと同じように掴むんか…?

何だかじっとしていられなくて、俺は無意識に田中さんの腕を掴んでいた。

「…白石さん?」

白石「!」

ハッと我に返った俺は、腕を離そうとしたが不自然になるので止めた。
どう言い訳をしようか、頭をフル回転させる。

白石「…田中さんの腕細すぎやろ!」

「今間がありましたね。平気です、わきまえてますから。どうせ、私の腕なんて筋肉は1mgもありません。全部肉と脂肪ですよ!」

腕を振り払われ、残念な気にもなったけど、上手く誤魔化せたようで安心した。

しっかし、田中さんておもろいなぁ。
何も言うてへんのに、勝手に話が進んで、勝手に膨れてんのやから。

謙也「ふっ、ははは!」

謙也が吹き出したのを境に、俺も口を開けて笑った。
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