何も変わらないもの 【完結】

□何も変わらないもの 3
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田中said

昨日は意味の分からない事ばかり起きたなぁ。

携帯の電源を落としていたことを思い出し、電源を付ける。

「なんだこれ…。」

画面に映し出されたのはたくさんの不在着信…。
どれも知らない番号。

嫌な予感しかしなかった。

仁王…!!あいつ…!!

くん呼びしていたことなんて忘れた。
もう絶対に仁王やテニス部なんかと関わらない!

こんなに怒ったのは久しぶりだ。

そして、こんなに決意を固めたことも久しぶりだった。

とりあえず、履歴に入っている番号は着信拒否にして、ブラックリスト行き。

ああ、なんてめんどくさい…。

そしてそのせいで遅刻しかけたので、私の怒りはさらに大きくなった。

休み時間になって、トイレへ行った。
なぜか空いていなくって、その上並んでいたから少し離れたトイレに行くことにした。

そのトイレは、ちょっとした噂があるから利用する人が少ない。
まぁ、『トイレの花子さん』みたいなやつだから多分大丈夫。
…ちょっと怖いけど。

ちょっとした恐怖や苛立ちで、早歩きになる。
角を曲がろうとしたとき、誰かにぶつかって何かが落ちようとしていた。
私は必死に取ろうと手を伸ばす。
ぶつかった相手も落ちそうなものを取ろうとしていたらしく、私たちは2度目の衝突をして、床に倒れた。
それと同時に、何かの割れる音がした。

お、重い…。

2人で、ぶつかりながら倒れたから、相手が私の上に乗っかるような体勢になった。

私がうつ伏せで倒れたのは、本当に幸いだった。
もし仰向けだったら、起き上がるときに、押し倒されたように見えるから。

「すいません。前、見ていなくて…。」

幸村「いえ、こちらこそ。重かったでしょう?」

え…。
なにこの人。
めっちゃ美形。
え、男?男だよね?

「…重かった、です。」

私はその人に見とれて、お世辞を言うことすら忘れて上の空だった。

そして、我に返った時の恥ずかしいこと…。

「あ、えっと、そういうことじゃ…。」

幸村「ふふ。いいんだ。それより、大丈夫?どこか、ケガとかしていないかい?」

ん?
なんだこの違和感…。
聞いたことのある声…?
でも、初対面だし、気のせいか?

「だ、大丈夫、です。」

幸村「良かった。俺は、3年C組の幸村精市。初めまして、えっと…。」

初対面…?
初対面…!!

「本当に、すみませんでした!!あ、あの、割れちゃった花瓶、私が処理しますので…。」

急げ、急げ。
あの人は、『テニス部』だ!
昨日の電話の声だ!!

知らない名前だったけど、こんな美形なんだからファンクラブの1つくらいあるはずっ!!
それにここは校内…!!

殺されるっ!!!

なんて軽率だったんだろう。
てか何で顔と名前全然知らなかったんだろう。

幸村「ちょっと待って、急にどうしたんだい?」

せっせと散らばった花瓶のかけらをちりとりで集め、その場から立ち去ろうとしたその時、腕を掴まれた。

「触らないで!近づくな!関わるな!」
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