小説

□望み
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茶碗がさがると手招きされた。

「こいよ。一緒に梅を見よう」

庭に向かって腰をおろした鷹司の膝の上にのせられて、後ろから抱きしめられて。

(鷹司の腕、安心する…)

のんびりとした時間の中、紅白の木を見比べる。

「梅って 鷹司にぴったりだよね」

ー 紅は優美な人、白は品

(優美って言葉、女の人よりしっくりくる)


なにげなく呟くと、腕の力がぎゅっと強まった。


「あんまり嬉しくねえな、それ」

「…っ鷹司、くるしい」

「じゃあくすぐるか」

「いやっ!」

本当にされるかもしれないという危機感に逃れようとするが、笑って引き戻されてしまった。

「何もしないからここにいろよ。何か分かるかもしれねぇんだ」

「…考えごと?」

「ああ。大事な考えごとだ」

(どうしたんだろう)

穏やかに話す声は優しいのに、表情は真剣そのもので心配になる。

(今話しかけたら邪魔しちゃうかな?)

それならせめて、できることを。

体重を預けて示す

(ここにいるからね)



「わからねぇ…」

しばしの沈黙ののち、鷹司が口を開いた。

「なぁ雛菊」

(…?)

「お前の欲しいものってなんだ?」
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