小説

□紫
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「もし生まれ変わっても、また鷹司と会えたらいいのに」

抱き寄せられた腕の中でぽつりと漏らす

「いきなりだな。どうしたんだよ?」

一瞬驚いた声がして、頭を撫でていた手が止まった。

真っ直ぐな瞳が、私の顔を覗き込む


「源氏物語を…読んだの」


ー 紫の上が最期に自分に問いかけていた

生まれ変わってもやはり、同じように生きたいか、と。


私だったら…なんて考えるのは早々にやめた。

そんなこと、どんなに彼女の立場になって考えたってただの邪推にしかならない


その代わりにふと、疑問を持ったのだ

ー 私は?もし生まれ変わっても…



「…そういうことか」

静かに話を聞いてくれていた鷹司が、頷きながらふっと笑った。

「前に言ったろ。俺はお前を愛するために生まれてきたんだって」

「え…っ…うん、言ってた」

唐突過ぎてびっくりしたけど、すぐに忘れるはずのないあの日を思い出す

「出会うことも、こうして一緒になることも、運命だったんだ。けど俺は、この命だけじゃお前を愛し尽くせない」

「…え?十分だよ、私はしあわ」


ー せ、の一文字は言わせてもらえなかった


それより早く、焦ったように唇が重なったから。

「そういうことにしとけ」

「ど…して」

混乱する頭で、にっと形作った口元を見つめる。


「そうすればもう一度、同じ運命を持って会いに行けるかもしれないだろ」









初めてできた好きな人は、私を好きだと言ってくれた。

ー 告白、されたのだ

真っ直ぐな言葉と瞳に、私はただただ頷いた。

美しく笑みをたたえた唇が、私のそれに触れようという距離に迫ってくる


…直前、落とされた言葉に、私はようやく思い出した。




「だから言っただろう?運命だって」





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