小説
□一番の「好き」
1ページ/1ページ
*
「なあ雛菊、その…お前はちゃんと気持ちよくなれたか…?」
ことを終えて俺の腕でまどろむ雛菊の顔を覗き込む。
俺を感じてくれているのが伝わる度、可愛くて愛しくて…それ以上に求めちまう
実際今も、そうして無理させてしまったことを自覚していた。
「気遣ってやれなくてごめんな」
「ううん…鷹司はどんなときも、大切にしてくれるよ」
ふわりと笑って身を寄せてくる雛菊に、幸せを逃したくなくて腕に力を込めた。
「今日だって、いつもよりもいっぱい好きだって言ってくれた」
照れているのか、雛菊は俺の胸に顔を埋めてきた。
「…っそう、だったか?」
確かに今日は、いつにも増してお前が可愛いく見えて…。
(でもやばい。今が一番可愛い)
さすがになんとか堪えてはいるが、また触れたくなってきて焦る。
(これ以上可愛くなられたら困るな)
おやすみの口づけを落とすために顔をあげさせようとしたとき、一段と熱く胸に吐息を感じた。
(…っ!?)
「だから…気持ちよかったよ」
ー 消えてしまいそうな声
本人は声を抑えるためにやっているのかもしれないけど、俺の心には直に届いた
(………無理だ)
「もう一度」
ハッとしたように顔をあげた雛菊の唇を奪うように口づけて覆いかぶさり。
「え…だって、さっき謝って…」
「あとでまた謝らせてくれ」
「どうしてっ?」
「あんなこと言われて我慢できるとでも思ったのかよ」
「それは…鷹司が聞いてきたから…」
「お前が嫌なら無理にとは言わない」
(嫌われるのはもっと堪えられないからな)
じっと見下ろすと雛菊はじわじわと頬を染めていく。
「…ずるい…」
拗ねたような呟きに、ふっと笑みが零れた。
「お前がかかってるなら、ずるくらいするかもな」
「っ…!」
「まだお前の『好き』を聞いてない」
(「私も」なら何度も聞いたけど、やっぱりこいつの口から聞きたい)
ー そんな余裕を与えなかった、自分のせいではあるのは百も承知なのだが。
(俺はずるいな)
「いいか?」
雛菊がこくりと頷くのを確認して、再び激しく口づけていく。
「好きだよ、鷹司…っ」
「ああ、俺もだ。…お前が、好きだ」
そんなやりとりがふたりの心を満たしていくのを感じて。
俺たちは幾度となく想いを確かめたー