小説
□望み
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午後の公務が早くに片付いたため、私は鷹司の部屋を訪れていた。
「疲れたか?ちょっと待ってろ」
部屋に入るなりそう言って、お茶の準備をしてくれて。
「ありがとう…」
対してお礼を言えば、きらきらと目を輝かせて菓子を勧められた。
「これ、さっき届いたんだ。お前が来たならちょうどよかった」
(…あれ?)
ー 菓銘に一瞬、何かが引っかかる。
(どこかで聞いたことがあるような…)
城下にいた頃は、甘味といえば団子だった。
きっと最近のはずなのだけど …
「おい、雛菊?食欲なかったか?」
(…っ!!)
思い出せずにもやもやしていると、声を掛けられた。
「あ、ううん!違うの。珍しいお茶菓子だなって思って」
「そうか…ならよかった。遠慮せずに食えよ」
「うん。ありがとう」
お茶菓子の載った懐紙に手を伸ばす。
ひとくち味わって思わず目を見開く私に、鷹司も目を細めて笑った。