小説
□橙
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「…おい、起きろ」
これは、鷹司の声…?
初夢で会えたと思ったら、声まで聞こえてくるなんて。
(今年もいいことありそう)
素敵な一年になりますように…。
「ー おい、次で起きなかったら置いてくぞ。起きろ、雛菊」
(…!!)
ぱちりと目を開けると、目の前には鷹司の顔が。
「…っえ…え!?」
「静かにっ。誰かにばれたら抜け出せなくなるだろ」
ひそひそ声で叱られて、私はようやく思い出した。
(そっか!初日の出見に、連れてってもらうんだっけ)
「馬の準備はしてある。…行くぞ」
「う、うん…ごめんね?私だけ寝てて」
「まったくだ。お前、なかなか起きねえし」
(うう…)
「ほら、手出せよ」
ひょいと立ち上げられると寒さが肌を刺し、私は慌てて打掛を羽織った。
「それだけで大丈夫か?外はもっと寒いぞ」
「うん、平気」
「ならいいけど。風邪ひくなよ?」
意地悪く笑って部屋を出て行く鷹司を、足音を忍ばせて追いかける。