小説
□慣れない誘い方
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「俺をその気にさせてみろよ」
ちょっとした悪戯心だった。
(こっちまで照れるって、いつも言ってるだろ!)
予想通り真っ赤になり、涙目で見上げてくる。
(限界…か?)
ー と、その時
唇をむにっと押し付けるように重ねられ、思わず目を見開いた。
「…っお前…練習しろよな」
滅多にないその行為に驚きと愛しさが込み上げたが、出てきたのはそんな言葉で。
(「可愛い」ってなんで言えねぇんだ…)
酷いと頬を膨らませる彼女をなだめるようにくちづける。
(雛菊が嫌がらなければ、最初から『その気』ではあったけど)
「…今の、誘いと取っていいんだな?」
こくりと頷いたのを確認し、俺は帯に手をかけた。