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□【15 好きって言って2】
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【15 好きって言って2】
「お邪魔しまーす!」
俺より先に部屋に入る桜。
まだ、頭が混乱してる俺。
部屋の中にいたのは、、、
「かなちゃんおっそいよ!マンガ!新刊どこにしまったの!?とも暇すぎて1巻から読んじゃってるよ!?」
予想通りそこには、ともがいた。
固まる桜。
そりゃそうだ。
俺に妹がいるわけない。
見知らぬ女の子が制服のまま俺のベットの上でごろ寝しながらマンガ読んでるんだから。
「…奏くん?誰、この子?」
震える声の桜。
「え?かな、今日お友達来る日だったの?とも聞いてないよ、ごめん。お友達さんも、ごめんなさい!」
驚いてベットの上で正座をしながらぺこっと謝る、とも。
いやもう遅いから。
「あの、私、奏くんの彼女の桜って言います。あの、あなたは一体誰なんですか?」
冷静を装いながら言ってるのがわかる。
ここで俺がなんか言ったらキレそうな気がして黙ってる。
「え、かなちゃん彼女いたの?それとも初耳。なんで言わないの?あ、彼女さんすみません。かなちゃん、あ、奏くんの幼馴染の佐原悠莉って言います。奏くんとは同じ歳です。」
「…佐原悠莉。」
1年の時に行った合コンで悠莉は他校にも割と有名になっていた。
本人はあまり気づいていないようだったけど。
それは桜の学校でも例外ではなく、特に女子校では、敵視されていた。
桜も俺の幼馴染の佐原悠莉を知っていた。
1度だけ聞かれたことがあったが、ただの幼馴染と答えただけだった。
「随分と仲が良いんだね?悠莉ちゃんって言ったっけ?奏くんがいないのによく家にあがってるの?」
ああもう怖い。
女子の話し方怖い。
「うーん。まあ、幼馴染だし。かなのお母さん仕事でなかなか早く帰ってこないからご飯作ったり一緒にゲームしたりとかかな?普通じゃない?」
「そっかあ、悠莉ちゃんがご飯作るから私のはいらないって言ったんだね、奏くん。」
今までに見たことのない顔で桜が振り返る。
「いや、えっと。」
言葉が出てこない。
てゆか、ともがこんなに早く帰ってくるなんて聞いてない。
俺が頭の中で会議してる間に桜はまたともの方に向き変えて、
「悠莉ちゃんさ、もうご飯とか作らなくていいから!私が作るし!あと、私が彼女なんだから勝手に奏くんの家にも来ないで!!」
初めて怒鳴る姿を見た。
女子怖い。
固まるとも。
そりゃそうですよね。
「か、関係なくないですか!?私は昔からかなちゃんの幼馴染で、これはもう習慣みたいなものだし、彼女できたから出禁って言われても納得いかないです!」
ビビりながらも言い返すとも。
ともはもともと女子のゴタゴタに巻き込まれやすいから、女子の喧嘩が苦手である。
「はー?頭おかしんじゃない?彼女がいるんだから身を引けばいいでしょ?」
「じゃあ聞きますけど、かなの好きな食べ物知ってますか?かながご飯のあとすぐに歯磨かないからいつもともが怒ってるのとか、お風呂のあとドライヤー使えって言ってもゆうこと聞かないのとか、気まぐれで料理手伝おうとして手際悪すぎて手切ったりとか、かなのなにをしってるんですか!?」
珍しく言い返すとも。
若干涙目になっている。
「それを、これから知っていくんじゃない!だって私彼女だし!!たかが幼馴染に邪魔されたくないわ!!」
「た、たかが幼馴染じゃない!!!」
ついにともが泣き出した。
「かなは、かなは、ともが1人にならないようにって、う、いつもは強引で、バカなのに、優しくて、うっ、ともにとって大切で、ともは、かながいなくちゃダメです。かなが、いるから、ともが、今楽しくて、だから、と、ともはかなが大好きなの!!!」
うわーん、とそのあとなきじゃくる、とも。
なんか胸が熱くなってきた。
「はは、それは悠莉ちゃんが思ってるだけなんじゃない?奏くんは現に私とつきあってるんだし。いくら悠莉ちゃんが好きでも奏くんはそんなこと思ってないかもよ?」
「うっ、え、そんな、そんなこと、、ない。」
声を詰まらせながら反抗する。
「じゃあわかったわ。奏くんに聞いてみましょうよ。」
まって、俺も頭混乱してるから。
焦る俺。
「奏くん、私と悠莉ちゃん、どっちが大切なの?」
「…えっと。」
声が出ない。
考えがまとまらない。
そもそも考えられない。
「奏くん!!!」
今日1番の大きな声で桜が言う。
少しの沈黙。
「そういえば、私、奏くんに好きって言ってもらったことないかも。」
桜がボソッと言う。
その瞬間、狂ったように腕を掴まれ、
「ねえ、奏くん、私のこと好き?ねえ!?ちゃんと好きよね?だって私たち付き合ってるんだし!!」
掴んだ腕に力を込める。
なきじゃくるとも。
俺も頭が真っ白になっていた。
「…桜。」
掴まれていた手を振りほどく。
「、え?」
「ごめん、俺たち別れよう。」
「え、いや!!絶対に、いやよ!!こんな幼馴染に負けるなんて絶対嫌!!」
頭の中で何かが切れた。
「こんな幼馴染なんて、言うな!とものことなにも知らないくせに悪く言うな。ともを泣かすな。俺、あいつが泣いてる姿見たくねぇんだよ。ともには笑っていて欲しいの。ともは俺が守る。」
今まで口には出さなかった思いが溢れ出てくる。
放心状態の桜。
「…わかった。別れましょう。」
そのまま桜は帰って行った。
いつまでも泣き止まないともの隣に座る。
頭を撫でながら、
「とも、ごめんな。嫌な思いしたよな。」
無言で首を振る、とも。
そのまま俺に抱きついてきた。
「かな、大好き。かな以上の友達なんて一生できないと思う。かながいればなにもいらない。かなはこんなともを、受け入れてくれた唯一の人だから。だから、とももかなにいっぱいお礼するからね。」
泣いてグチャグチャになった顔で笑って見せる。
ともを誰にも渡したくないと思った。
「安心しろ、俺もともが大好きだから。」
頭を撫で抱き返す。
「かなのためなら溶けてもいいよ?」
「それ、アナな。」
いつものバカな2人に戻っていた。
そのあと何故だか2人でトトロを見て母さんが帰ってくるまで笑いながら過ごした。
…どこかで心が動く音がした。