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□【14 好きって言って】
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【14 好きって言って】

高2の夏休み。
俺に彼女ができた。
俺の通ってる学校のすぐ近くにある女子校に通う桜って言う。
背丈がすらっとしていてモデルみたいな女の子だ。

ともと長くいたせいか、特に女の子に興味がなかったけど、男子校の俺らの学校でも桜の噂をする奴がいるくらい、すごくいい子で向こうから告白してきた時もすごく真剣に思いを告げてくれたから付き合うことにした。

桜とは放課後遊びに行ったり、休日に映画を観たりしてデートをした。

なぜか俺らが付き合ってることが両方の校内中の噂になっていた。
桜は気にしてないようだったしむしろ嬉しそうだった。
けど俺はあんまり嬉しくなかった。
誰と誰が付き合ってるとかそういうことを他人が知ってなにになるんだろうと思う。

そのことを昼休みに刹那に相談したら、

「奏くんはさ、本当に桜さんのこと好きなの?」

「どういう意味?」

「少し可愛いから?性格がいいから?自分のことをすごくよく思ってくれているから?それだから付き合ってるの?」

言葉が出てこなかった。
まさにその通りだったから。

「俺、好きって感覚よくわかんないんだわ。桜が優しくしてくれたり、待ち合わせで俺のこと待ってる時とか可愛いなとかは思うんだけど、それにあいついいやつだから。でもそれが好きって気持ちなのかわかんない。」

「僕が見てても桜さんはすごくいい子だと思う。可愛いなって思うのもわかるよ。でも奏くんは桜さんに恋してるのかな?」

「…正直わかんない。」

「それって桜さんに嘘ついてるってことだよね。僕は失礼な事だと思うよ。」

大人しそうにみえて刹那は核心を突いたことを言う。
自分が正しいと思うことをはっきりと伝えて来てくれる。
だからそれが図星だったから俺は何も言えなかった。





「奏くん。帰ろ!」

今日は桜と帰る約束をしていた。
昼に刹那と話した後だからなんか気まずい。

「あぁ、今日どこも寄らず帰らね?俺なんか眠くてさ。」

ちょっとした嘘をつく。
本当は少しでも一緒にいるのがなんか申し訳ないっていうか気まずいって思ったからだ。

「なんで?今日は奏くんの家に行ってみたい!ねえ?だめ??」

普段わがままを言わないで素直に俺の意見に従う桜が珍しくわがままを言う。

「俺の家、桜の家と真逆だし、遠いよ?今度でもいいんじゃない?」

とりあえず1人になりたい俺はそれを受け入れようとしない。

「えー、行きたい!行ってみたいの。それに今日はお母さん遅いんでしょ?私がご飯とか作ってあげるから!ね!」

そこまで言われたら観念するしかない。
俺は押しに弱いのかもしれないな。

「わかった俺の家行こう。でも飯はいい。桜送るから遅くなるし。」

家に行ける事になってよろこぶ桜。
ご飯本当にいいの?と聞いてきたがいらないと断った。




「わー、ここが奏くんのお家か〜!!」

とても嬉しそうに普段は大人しい方の桜が騒ぐ。

「はーい、いらっしゃい。なんもないけど、とりあえず俺の部屋行くか。」

部屋のドアノブに手をかけた時、中から音がするのが聞こえた。
今日は母さんも仕事でいないし、兄貴も1人暮らしだからいるわけがない。
だとしたら、あいつしかない。

「どーしたの?」

なかなか中に入らない俺に桜が声をかける。
どうしたらいい。
この部屋の中には確実にあいつがいる。

「もー、じれったい!私が開けます!」

ノリノリの桜が俺の手をはねのけ扉を開ける。
まって!まじでやばいって!!

ガチャ、

俺の心の声虚しく扉は開かれた。


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