Book

□【12 高2の春】
1ページ/1ページ

【12 高2の春】

唄ちゃんが卒業して初めての春。
学校で1番仲が良かった唄ちゃんがいない学校が寂しいけど、2年生になったし唄ちゃんがいないのはしょうがない事なので諦めて学校へ行く。

高校までは電車で30分くらいで、そのあとはバスで15分で着く。

いつものようにバスに乗って座っていると1人の男の子が走ってきた。
多分同じ学校の1年生だと思う。

バスもう出ちゃうのに、あの子間に合わないだろうな。

この時間のバスに乗れないと遅刻ギリギリになってしまう。

入学早々1人で遅刻するのはかわいそうだと思い、私はバスを降りた。

そのままバスが発車する。




バス停で男の子と2人きりになる。
どちらもなにも話さない。
なんで降りたんだろ、自分。
少し後悔する。

「あの、なんでバスを降りたんですか?」

まあ、普通そう思うよね。

「君、うちの高校の1年生だよね?入学式早々遅刻はかわいそうだと思ったから、教室までもわからないだろうし、案内してあげようかなって。」

「…え?」

「それに私、ギリギリになる事多いから、校門閉めるおじちゃんと仲いいから、安心して。」

警戒心がある男の子に笑顔で伝える。

「そんな、俺のために悪いです。先輩ですよね?本当すみません。」

「あ、自己紹介まだだったね、普通科2年の佐原悠莉です。部活は軽音部に所属してるよ。」

「あ、俺の名前は時田歌羽です。歌うに羽でうたうです。」

一瞬びっくりした。
唄ちゃんと同じ名前だ。

「うそ!?歌羽かぁ、私の先輩にも違う字で唄ちゃんってのがいてね、もう卒業しちゃったんだけど。なんか嬉しいな!」

「そうなんですね。結構珍しい名前なのに。不思議ですね。」

ちょっと運命を感じた。

「時田くんはさ、音楽好き?」

運命を感じたついでに聞いてみる。
なんかドキドキする。

「はい!大好きです!俺も高校入ったら軽音部に入ろうと思ってて、あ、俺ボーカルしかできないですけど。」

歌羽って名前で歌を歌うのか。
すごい興味ある。

「時田くんさ、今日の放課後一緒にカラオケ行かない?私のバンドのボーカルにスカウトしようかと思って!そのオーディションね?」

一瞬考え込む時田くん。
そりゃそうだよね、まだクラスにも友達もいないのに、いきなり先輩に誘われて、しかもオーディションとかいっちゃって。

「いいですよ!俺も佐原先輩のバンドに興味持ちました。オーディションがんばります!」

意外とすんなり受け入れてくれた。
もしこの子がうちのバンドに入ってくれたらツーボーカルバンドになれるとちょっと嬉しく感じていた。

「それと俺の事は歌羽って呼んでくれて構いませんよ。入学初日からいい先輩に出会えて嬉しいです。バス乗り過ごして良かった。」

かわいい事いうな。

「そっか、じゃあ歌羽って呼ぶね。私の事も悠莉でいいよ。ウチの部ゆるいから先輩ってむず痒いし(笑)」

「じゃあ、悠莉ちゃんで!」

にっこり笑顔で答える。
春は出会いの季節って言うけど、かわいい後輩に出会えてよかった。

そのあとは連絡先を交換して、無事に歌羽をクラスまで送り届けて終わった。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ