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□【10 学園祭3】
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【10 学園祭3】

「悠莉ちゃん、帽子斜めにかぶったほうがかわいいかもよ?」

「本当に?じゃ髪両サイドにお団子にして少し斜めにかぶろう〜」

本番まであと1グループになっていた。
会場内もかなり盛り上がっている。

ハロウィンが近いということで私達のバンドはハロウィンコスプレをしてステージに立つことにした。

私が魔女の格好で、唄ちゃんはオオカミ男。
村上先輩はシスターで、裕太くんはゾンビ。
てっちゃんがねこ娘。

結構奇抜な考えで面白いと思う。
みんなのテンションが上がってくる。




ついに私達の番がやってきた。
MCが派手に紹介をしてかなり会場内が盛り上がってきた。

「こんばんは、今回の大トリ、『sconeとsoup』です。そんじゃ長ったらしく話すの苦手なんで早速曲を聴いてください。1曲目は『甘いだけだと思うなよ』」

『sconeとsoup』とは私達のバンド名。
『甘いだけだと思うなよ』はポップな始まりなのに中盤から重めなサウンドになりかなりハイになれる、ど頭にもってこいの曲。
私達のバンドの曲は唄ちゃんが作曲をし私がほとんど作詞をしている。

「きゃ〜〜、篠原くんかっこい〜〜」

「唄く〜〜ん!こっちみて〜〜」

オオカミ男姿がとても似合っていて、普段よりたくさんの大きな声で唄ちゃんを呼ぶお客さん。

そんな歓声に少し手を振り、早速曲が始まる。

「ワーン、ツー!」

てっちゃんの掛け声で曲が始まる。
会場が盛り上がる。

私の歌が入る。
ベースを弾きながら歌うのが心地よい。
バンドの音もズレることなく、演奏していて気持ちがいい。

2曲目、3曲目、とそのまま続き、MCに入る。

「お前ら最高だわ!!」

唄ちゃんの一言で会場がもっと盛り上がる。
今見渡せば体育館に入りきらないくらいのお客さんがいる。

「みんな最高ですね。私も最高な気分です!こっからガンガン飛ばして行くんでついてきてくださいね!」

私の一声で会場がわーー!!!と歓声が上がる。
そのまま曲が始まり、最高な時間が流れる。




ついに最後の曲。
最後のMCで唄ちゃんが、

「最初はそこにいる村上と2人で始めたバンドですが、今ではかわいい後輩も増え、こんなにたくさんの人に愛されるバンドに成長しました。それはここにいるみんなのおかげです。俺ら3年生は今日がラストライブですが、これからもsconeとsoupをよろしくお願い致します。」

深々と頭を下げる唄ちゃん。
その姿に涙が流れた。
唄ちゃんがそこまで愛したバンドを解散させてはいけないと思った。

「私は!!来年もこのステージに立ちます!メンバーは変わってもsconeとsoupは続いていきます!これからもよろしくお願いします!」

自然と声が出ていた。
それにホッとしたようなメンバーの顔が見えた。

泣いているお客さんもいた。

やっぱり私はこの場所が大好きなんだな。
改めて思った。
この場所をくれた唄ちゃんには感謝しても仕切れない。

唄ちゃん、ありがとう。
お疲れ様。


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