Book
□【Extra 唄と悠莉】
1ページ/1ページ
【Extra 唄と悠莉】
『今年の1年生にめっちゃ可愛い子がいる』
校内ではその話題で持ちきりだった。
悠莉ちゃんのことは小さい頃からよく知ってて妹のような存在。
そんな悠莉ちゃんが学校で有名になるなんて思ってもみなかった。
「唄さ、1年の佐原悠莉ちゃんと仲良いよな?」
悠莉ちゃんが入学してからよく言われるセリフだ。
「まあ、幼馴染みだからね〜妹のような存在だし。」
そのセリフに笑って答える。
「あ〜、俺も幼馴染みになりたいわ。てか唄、紹介してよ。」
これもよく言われる。
悠莉ちゃんはよくわからない男の子から話しかけられるのあんまり好きじゃないんだけどな。
「あー、今度ね。」
確かに小さくてお人形さんみたいな顔の可愛い子だけど、共学でしかも女子の比率の方が多いこの学校でこんな有名になるなんて。
「すみませーん。唄ちゃんいる?」
タイミングよく悠莉ちゃんが俺のクラスにやってきた。
悠莉ちゃん、タイミング悪いよ。
「噂をすればなんとやら!悠莉ちゃんじゃん!!めっちゃ可愛い!」
周りの男達が騒ぎ出す。
全く気にしない悠莉ちゃん。
そのまま俺を見つけて駆け寄ってくる。
「唄ちゃん!今日の放課後ひま?ケーキバイキング行かない?」
そーゆうことはLINEで連絡すればいいのに。
人懐っこい性格だから直接話したがるのもわかるけど。
「それ俺らも参加したらいかん?」
俺の周りにいた男達が会話に入ってくる。
「え、えーっと。」
困った顔の悠莉ちゃん。
人懐っこいって言っても、全く知らない男の人達と一緒にケーキバイキングに行きたがる子じゃない。
「んー、悠莉ちゃん中庭行こうか?」
さりげなく席を外し、悠莉ちゃんを引っ張り出す。
外野の男達がなんか言ってたが無視をする。
「唄ちゃん、さっきはありがと。」
「だからあんまり俺のクラス来るなって言ってるじゃん。悠莉ちゃん毎回絡まれるんだから。」
「ごめんなさーい。だって唄ちゃんに会いたかったんだもん。」
しょんぼりした悠莉ちゃん。
その顔が可愛かったから許すけどさ。
「もー、その顔すれば許されると思ってるでしょ?」
頭を撫でながら言う。
笑いながら、
「ケーキバイキング行くよね!?」
「しょうがないな、じゃあ放課後、悠莉ちゃんのクラスに迎え行くからね?」
「やったー!唄ちゃん大好き!」
大好きとか簡単に言うのは恋愛感情がない証拠。
本当に好きな子が出来た時に言うようによく伝えてるのにわかってないな。
「はいはい。じゃあ放課後ね。」
頭をポンと撫でて別れる。
奏の前でももっと甘ったるく接すればいいのに。
俺はこいつらが両思いだと思ってる。
見ていてわかるくらいにお互い好き同士だと思う。
付き合わない理由はなんとなくわかってるけど、本人同士にも問題があると思う。
まあ、口にはしないけど。
それは本人同士の問題だし。
唄ちゃん!って懐いてくるのも可愛いし。
しばらくは様子見でお兄ちゃんやっててあげよう。