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□【03 篠原奏という男】
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【03 篠原奏という男】

かなの名前は篠原奏。
かなでと書いてそうと読む。

お馴染みの私は奏のことを『かな』と呼ぶ。
幼かった頃の私は奏という漢字を『そう』と読めなかった。
そのままかなと呼ぶようになった。

幼かった頃のかなは人見知りが今よりひどくて全く喋らなかった。
幼稚園の時に私の家の隣に引っ越してきて、そのまま同じ歳同士ということでよく遊んでいた。
遊んでいくうちにかなは少しずつ話すようになり、今ではわがまま言い放題の暴走しまくりなやつになっていた。

それでもかなと仲良くなれて後悔したことはない。

「かなちゃーん!新しいゲーム買ったんだって!?ともにもやらせろ〜〜」

「お前そーゆう情報すぐ手に入れるよな。絶対来るとは思ってたけど。」

かなも私のことを『とも』と呼ぶ。
私の名前は佐原悠莉。
『ゆうり』と読むけど私と同じ理由でかなも悠莉と読めなくて『とも』と呼ぶ。
そもそも『とも』とすら読まない。

「ともの学校来週からテストだろ?遊んでていいのかよ?」

完全に忘れてた…

「お願い!かなちゃん、かな様!!ともに勉強教えて!!」

他人からスーパーマンと言われるだけあってかなは勉強スポーツ音楽なんでもできる。

私の学校の授業と違くても範囲外でも参考書や授業のノートを見せれば基本的にすぐに理解して教えてくれる。

「しゃーねぇな、今度アイスおごりな?」

そーゆう優しさもある。
他の人には教えないのに私には甘かったりする。
それが嫌じゃない。

「かなちゃん愛してる!!」

「はいはい。知ってる。それよりノート見せろ。」

昔からこんな感じで仲良くしているから他人からは『付き合ってる』と言われる事が多い。
でもそんなことは全くなくて男女の壁を超えた友達である。

周りがどう思おうが私たちは気にしない。
楽しいことを優先させる性格だからかもしれない。

そのせいか、かなに彼女ができてもすぐに別れてしまう。

彼女よりも私を優先させてしまうかなには少しは彼女がさんのこと気遣ってあげれば?
と言ったことがある。
そしたらかなは、「俺がいなかったらともが1人になるだろ?」そう言った。
それがすごく嬉しくてその優しさに甘えていた。

かなになら何を言っても許されると思っていた。

かなとの些細な喧嘩はよくある。
でも1度だけかなと大喧嘩をしたことがある。

中学2年生の時に私に彼氏ができた事が1度だけある。

そこまで好きじゃなかったけど側にいて面白かったから付き合ってみることにした。

でも、かなとの関係がバレてその彼氏が私を殴った事があった。

その人は『男女の友情』を理解できなかった。

腫れた顔でかなと会った時、かなが怒鳴った。

「お前その顔どうした!?何があった?」

「…付き合ってた人に殴られた。」

「は?そいつなに?どこの誰だ?!」

「かなには関係ないよ。そんなに長く付き合ってたわけでもないし、向こうも殴ったらスッキリしみたいだし。これでいいんだよ。」

「そーゆう問題じゃねぇだろ!!殴った男教えろ、俺が殴りにいく。」

これ以上かなに迷惑をかけたくない。
かなとの関係を悪くしたくない。
かなと仲良くしていたせいで殴られたって言ったら?
かなは自分を責める。
そんなことして欲しくない。

「うるさいな!!!かなには関係ない!!」

少しの沈黙。

「…わかった。」

それきりかなと会話することはなかった。
すごく辛くて、なにも言わなかった事を後悔した。
かなのいない生活はなんてつまらなく悲しいんだろと思った。
でも、私からは話しかける事ができなかった。





中学3年生になった時かなから話しかけてきた。
喧嘩する前となにも変わらず話しかけてきた。
すごく嬉しかった。
後から知ったが私の元彼をボコボコにして2度と私に近づかないようにさせたらしい。

それからわたしが彼氏をつくることはなくなった。

かながいれば誰もいらないと思った。
かなの優しさ強さ強引なところわがままなところ全てを受け入れる事ができた。

かなとばかりいるから女友達も少なかった。
私をハブる子たちもいた。
それでも辛くなかったし、かなといれれば楽しかった。

男の子とも話すこともほとんどなかった。
授業の話しや学校行事の話しなどその程度だった。
それでも告白してくる人もいた。
私はかならず「ごめんなさい。付き合えません。」と答えた。

かなには1人兄がいる。
篠原唄。
かなの2個上で私がかな以外で仲が良かったのはその唄ちゃんだけだった。
唄ちゃんは私のお兄ちゃんみたいな存在だった。

中学の時に2人で暮らしていたおばあちゃんが入院してしまってからは特にかなとの時間が長かった。
かなとは家族のような存在になっていた。

かなの家も複雑で、両親が離婚していて母と兄と暮らしていた。
かなのお母さんも私を本当の子供のように可愛がってくれた。

私が1人にならないようにかなが気を使ってくれていたと後から思うようになった。

篠原奏とは、一見なんでもできるし他人に対して丁寧な優等生だがクールでとっつきにくいとも言われている。
それはかなの外面で、本当はよく笑うし強引なバカだ。
でもそれ以上にとても優しい人である。

そんなかなが私は大好き。


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