虚言の魔導師と美術館
□不思議現象第2弾
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通路の奥まで戻り、ありんこの絵を壁から外す。
思っていたよりも緩い取り付けだったらしく、予想以上に簡単に取れてしまった。
美術館として、この取り付けはさすがにどうかと思うが。
絵を持ってありんこのいる場所へ戻ると、彼(?)は律儀に、一歩も動かずにボクらを待っていた。
「ホラ、持ってきてやったヨォ」
小さく掲げて、見せつけてやる。
ありんこは「わぁっ」と嬉しそうな声を出して、ててててと近寄ってきた。
イヴが貸してと言うから渡してみると、イヴはありんこが見やすいように絵を床に着けてご丁寧にありんこに見せてあげる。
…オヒトヨシだナァ。
一方でありんこはと言うと、「ぼくのえ かっこいい。うっとり」だなんて、絵の中の自分に酔いしれてやがる。
「…パシっておいて、お礼も無しかヨォ」
「でも、嬉しそうだよ?」
「ウン、まぁソウなんだケド…」
正直、願いを叶えてやればゲームみたいに何かくれるんじゃないかって思ってた。
ボクのなんだかよくわからない顔を見て、イヴもなんとなく察したらしい。「あー…」というような、困ったような顔をする。
どうにか現状を壊せないものかと、グルグル志向を巡らせる。
この部屋には三つの扉がある。
1つは、イヴがこの部屋に入ってきた扉だから、調べる必要はない。
もう1つは通路奥の扉。ここは鍵がかかっていたから論外。
最後はここから一番近い扉。ここは、先に穴ボコが開いていて奥に進むことができない。
何かで穴を塞げれば、進むことができるんだけど…
「「あ」」
思わず顔をあげれば、イヴも顔をあげてこちらを見つめていた。
「イブ、チョットボク思いついたんだケド」
「うん、たぶん私たち、同じこと考えてるよ」
彼女の言うことが本当なら、なかなか肝の据わった子かもしれない。