虚言の魔導師と美術館
□目が覚めると
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どれくらい寝ただろうか。
周りの肌寒さに耐えきれず、ボクは目を覚ました。
「ファ〜〜〜ァ……あー、カラダがバッキバキだヨォ…イスなんかで寝るんじゃなかった」
思い切り伸びをして、お茶でも飲もうかとイスから降り…
…ようとしたケド、そこは既に緑色の床の上だった。
「アレェ?いつの間に落ちたんだろ…って、ん?」
違う。
イスの上とか寝相とか、そういう問題じゃない。
そもそもローアの船内はこんなに緑色じゃナイ。
よくよく辺りを見回してみる。
緑の床、緑の天井。
同じく緑色の壁には、虫のそこそこ大きい絵が数枚飾られている。
「え…?」
目をこすっても、ほっぺたをつねっても、目の前の緑一色の風景は何一つ変わらない。
「ココドコーーーーーーーーー?!!!!!」
なんだかよくワカラナイ、ひたすらに緑色の空間に、ボクの叫び声は空しく響き渡った。
「待て待て待て待て…オチツケ、オチツクンダヨォ、マホロア……」
とにかく一旦落ち着こうと、辺りをうろうろ歩き回る。
しかしそれが仇となって、更なる混乱をもたらした。
普段浮遊しているボクには縁の無い、“地に足を付けた感覚”。
それに違和感を感じて、おそるおそる足元を見れば、ポップスターではペイントローラーしか持ってないような長い脚が視界に入った。
しかも、触ってると、自分が触れられた感触がする。
ついでに腕も生えている。
「ウソ、ダロォ…?」
これって、これってツマリ…
「ニンゲン…?」
額縁のガラスに映るボクはまさしく地球人そのもので。
晴れてボクは、見知らぬ世界でいわゆる擬人化"を果たしたのだった。