大好きなオレンジ色

□出会い(2)
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鶴橋を引き摺り乍,俺は館へと帰ってきた.今日の亡者も手強い奴だった.疲れからか何時も軽い筈の鶴橋が巨大な重りに感じられる.一緒に任務をこなした平腹からは全く疲れを感じない.あの元気は何処からやって来るのか,不思議で仕方ない.

ここ暫く亡者の出現率が高く,任務漬けの日々が続いている.やっと部屋で寝られる,とホッとしていた俺に即任務の知らせが届いた為,現在俺はすごぶる機嫌が悪い.まぁ肋角さん直々の司令なんて久々だし,断るにも断れないのだが.

「 … 失礼します.肋角さん」
「あぁ,入れ」

室長室へと脚を踏み入れると,何時もの場所に肋角さんが座っていた.肋角さんの机の上には大量の書類が並び,俺以上の忙しさが感じられた為,つい先程迄有った筈の疲れがいつの間にか俺の中から消えていた.

「 … 廃校舎に,ですか」
「あぁ,ここから強い冷気が流れているという知らせを受けてな.凶暴な奴では無いと思うが,今後凶暴化する可能性も有る.年の為,保護して欲しい.」
「 … 解りました」
「頼んだぞ,獄卒の名にかけてな」
「はい」

肋角さんに一礼して室長室から出ると,報告書を届けに来たらしい佐疫と鉢合わせた.

「あれ,田噛また任務?」
「まぁな … 直ぐ戻る」
「そう … ,気を付けてね.」
「あぁ」

そんなこんなで俺は問題の廃校舎に来ていた.廃校舎の中へと脚を踏み入れた俺は,違和感に気付く.霧が立ち込めているのだ.亡者が原因だろうか.

然し,こんな処で立ち止まっている訳にはいかない.濃い霧で視界が悪い中,俺は前に進む.障害物を避けながら右へ,左へ,前へ,後ろへと歩き続ける.まるで迷路のような道に俺は徐々にイライラを募らせる.

廃校舎に脚を踏み入れてから随分時間が経過したと思う.そろそろ一旦帰って寝ようかと本気で考えていると,霧の奥に長過ぎる程の廊下が現れた.こんな処に廊下なんて有っただろうかと首を傾げ乍俺は迷うこと無く廊下の奥へと進んでいく.

その廊下は他のどの場所より霧が濃く,どうりで見つからない訳だと直ぐに納得した.

「亡者は … 此処か」

ツルハシを担ぎ直すと俺は更に奥へと脚を踏み入れた.
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