大好きなオレンジ色

□出会い
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「ここどこ - …」

私は終わる事の無い廃校舎の廊下をひたすら歩いていた.

廃校舎の教室で目を覚ました私は,状況把握に数十分程を用いた.

先ず,此処は何処なのか.見渡した処,廃校者の様だ.それは直ぐに分かった.然し,どの様な経緯で此処に来たのかは全くもって分からない.そして,自分は何者なのか.之はどう頭を捻らせても浮かんでは来なかった.

数分,また数分と考えた末に,諦めた私は廊下へと出た.廊下の奥は霧に覆われているようで奥が見える事は無い.取り敢えず進んでみたはいいものの,一向に出口は見つからず,数時間程が経過した.最初の教室に戻ろうとは試みたものの,なんせどれくらい歩いたのかが分からず,戻る事は出来なかった.

「学校の廊下,ってこんなに長かったっけ … ??」

歩いているうちにふと思いついた私は窓を開けようと試みた.しかし,窓はガタガタと音をたてるだけで開く気配は無い.窓は所々ガラスが割れた穴が空いていて,鍵が掛かっている様子も無かった為,私は首を傾げた.

考えるうちに廊下の広さからか寂しさを感じるようになってきていた.気付くと私は大きなため息を付いていた.

「如何して,こんな事に」

此処に来た経緯も,自分の名前すら思い出せない私にとっては,この長い廊下は不安を膨らませるには充分な空間であった.そしてその不安が新たな考えへと辿り着いた.,

「 … もしかして,私死んでる … とか」

ポツリと呟いて見た所たちまち不安は膨らみ,思わず自分の足の有無を確認してしまっていた.足が有る事を確認してホッと胸をなで下ろした.

足音らしき音が聴こえたのはその直後.古い廊下が軋む音と,「コツ,コツ」という歩く音が両方同時に誰もいない筈の廊下に響いたのだ.

「 …… っ!?」

徐々に徐々に近付いて来る足音に私の不安はたちまち破裂しそうになっていた.今すぐ逃げ出したかったが,足がすくんでしまった様でピクリとも動かない.足音が一歩,また一歩と近付いて来る.私は思わず目を瞑った.

足音が止まったかと思うと,途端に静寂が訪れる.私がゆっくりと目を開けると其処には一人の青年が立っていた.

「 …… チッ … 手間かけさせやがって」

軍帽と軍服に身を包み,鶴橋を右手に担いでいる.洋服を着ている私にとっては異質な姿だった.思わず目を丸くした私を見て青年は深く溜息を付くとゆっくりと告げた.

「 … 俺は獄卒.お前を──亡者のお前を捕らえに来た.」
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