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□僕と変態
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「これ、なーんだ」
そう言って差し出してきたのは、涼介の好きな黒で染まった容器に入っている媚薬とかいうやつ。
「媚薬でしょ?僕は使わないから」
即答して、涼介の手ごとそれを押し返す。
ベッドサイドのテーブルに置いてあったマグカップを手にとって、ふーっと冷ますと涼介はマグカップを僕の手から奪う。
するっと消えた温度に眉をひそめる。
「ココアあげないよ」
「早く返して」
威勢良く言ったものの、すぐに顔を歪ませてマグカップを返す様は、涼介そのものを表しているようでちょっと口角が上がってしまう。
それを隠すようにマグカップに口付けた。
「ねー、お願いっ」
広いベッドの上に転がり込むと、涼介は土下座するように布団越しにぼくの膝を撫でる。
「じゃあ、先に涼介使ったら考えてあげる」
はっと顔を上げてから、考えてまた落胆する。
どうしたらこんな表情豊かに育つのか、涼介のママに聞いてみよう。
僕と涼介の子どももこんな風に育てたいからなぁと、非日常的なことを考えてしまった。
「知念に使って欲しいの!!」
また差し出された容器を、今度は手に取る。
期待に満ちた涼介の顔。
馬鹿みたいで、でも格好良くて、どこか子供っぽいその顔は、僕以外誰のものでもない。
受け取った小瓶の中身を口の中に含むと、ふわっと甘い味が広がって思わず飲み込みそうになるのを堪える。
やった!と言わんばかりの涼介の唇にキスして、唇の隙間から舌を差し込む。
「ちねっ、ふっ…ん…!」
口内に甘い液体を分け与えると、ビックリした顔の涼介が僕の肩を掴んで逃げようとした。
そんなことさせるはずないでしょ。
涼介の後頭部に腕を回して逃げようとする唇を塞ぎこむ。
「んっう…!」
涼介の喉仏が上下に動く。
ついでに口内を舌で探っても、甘い液体はやっぱりなかった。
「…はっ、ぁ!」
口元を袖で拭ってから涙目で訴えるその姿に背筋がゾクリと疼いてしまう。
ココアをごきゅり、と飲んでから、身体に何か変化はないか自分の胸元を触る涼介を見つめた。
「やばっ、やばい!飲んだっ今!」
軽くパニックの彼を無視してTシャツを脱ぎ捨てる。
突然静かになった涼介にニマっと口角をあげながら近づいた。
じわじわと近づく距離に僕の肩を押し返しながら、やめてやめてと涼介は逃げ惑う。
「なっ、ちょ、ちね…」
「お風呂、はいってくるね」
はっ?とすっとんきょうな声を発して、耳まで赤くした涼介。
ついでに僕が、何期待してたの?と聞くと、僕のココアということも忘れて顔を隠すようにマグカップをグイッと傾ける。
「あっつ!!!!」