短編

□弱虫さん
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''なぁ、明日って部活ある?''

''ありますよ!''

''ありがと''


たった3通だけの短いメールしたっきり
彩くんとの距離は縮まらない。

やっと彩くんって呼べるようになったのにな

彩くんはバスケ部エースの先輩。

私は後輩マネージャー。

ただそれだけの関係にため息が出る。

今夜もベッドの上で君の事を考え
時間だけが過ぎていった。

「待ってるだけじゃあかんやろ!」

同じマネージャーの菜々ちゃんに言われる言葉が胸を刺す

わかってる。

わかってんねんそんなこと。

ロマンチック、ドラマチックになりたいんやけど

でもメールが今夜も送られへん
彩くんに近づく勇気が出てこやん

弱虫すぎる正確が邪魔や。

「あぁーもう!なんで送れんのよ!」

送信ボタンが押されへん自分にイライラする

(美優紀ー。早く起きひんと遅行やで!)

「….んー。あと10分」

(美優紀!ほんまに遅行するで!)

ママはなにを言ってるんや。

アラーム鳴ってないからまだまだ余裕やろ

「….んー。なんでよまだ余裕やん。
だってまだ8時….…8時⁈」

もー最っ悪!!!

なんなんアラーム合わしてたのになんで切れてるわけ?!

ママやって起こしてくれたっていいやん!

「もーほんま最悪!ママ起こしてや!」

(何度も起こしたわよ!
それよりご飯は?食べやんの?)

「いまダイエット中!
ママのバカ!いってきます!」

そんなに遅行したくないんやったら自転車で行けばいい。

そんなんわかってるけど、風でグチャグチャになるのが嫌やねん。

全力で走って遅刻せずに学校に到着。

安堵するも、学校に着いた瞬間鏡で自分をチェックして絶望する。

結局走ったせいで最短で巻いた髪はとれてまっすぐやし顔だってすっぴんに近い。

「…美優紀ちゃん?」

聞き覚えのある声がして振り返ったらそこには彩くんと愛菜先輩、その横には先輩と同じ色の校章をつけた女の人たち。

これ以上ついてないことってあるんかな?

今の私、どすっぴんやし可愛ない。

会いたくなかったな、彩くんだけには。

愛「どないしたん?そんな息切れして」

「….あっいや…..その」

彩「遅刻?」

「ちっ違います!ギリセーフです!」

「ははっ。そういえば今日はすっぴんなんやな」

1番気づかれたくない人に気づかれた。

もー最悪や。

「てか美優紀ちゃん次体育ちゃうん?
山田とか着替えてるけど」

彩くんの指差す方を見れば菜々ちゃんがこっちに向かって手を振っている。

(なー彩早くいこ?私らこそ遅刻しちゃう)

彩くんの周りにいる女の子たちはとびっきりの笑顔をみせる。

あの子みたいになりたいのに、なれない。

「なぁなぁぢゃーん!!」

体育が終わってでも休み時間なんかすぐ終わってやっと話を聞いてもらえたんは昼休み。

「み、みるきー⁈どーしたんよ!
また彩先輩?」

今日の最悪な1日について菜々ちゃんに包み隠さず話す

昨日の夜、寝落ちしてしまって寝坊したこと

お弁当を忘れたこと。

巻いてきた髪はほとんど風で取れてメイクもすっぴんに近いこと。

あと、朝のその酷い状態で彩くんに会ってしまったこと。

こんなについてない日ってあるんかな?

「菜々ぢゃんー。もう私の恋は散ったー」

「そんなことないって。
メイク道具は?持ってきてるんやろ?」

「….わずれだー」

「もー、どんなけついてないんよ。
ほら、私のやつ貸したげるから化粧だけでもしておいで?んでご飯買いに行こ!」

「そうするー」

「じゃあ今日は私のおごり!
ダイエットなんか忘れて食堂でお腹いっぱい食べよ!」


結局あのあと菜々ちゃんと吐きそうになるまで食べて放課後も部活終わりに食べてしまった。

部活中も彩くんとは目も合わせられずにできるだけ避けてしまった。

やのに彩くんばっかりに目がいってしまう

バスケしてる時の彩くん、やっぱかっこいい

今日もまたベッドの上で彩くんのことを考える。

彩くんに近づく勇気がでやん。

ただの後輩と先輩。

LINEの友達欄にはおるくせに
現実では友達にすらなれへんままで

携帯電話とにらめっこ。

友達欄におる彩くんの事を思い出したら
胸が熱くなった。

明日からは、もっと綺麗になってやろう
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