短編

□夫婦愛
1ページ/3ページ



「もーほんまに最悪!!!」


今にも爆発しそうなほど怒っているのは大学からの友人のみるきー。

なにやら旦那さんと喧嘩でもしたみたい

「それで?また旦那はなにしたの?」

「もー聞いて⁈彩くんな、記念日わすれて仕事行ってんで!それに…..」

みるきーの口から出た言葉はほとんど旦那さんの愚痴で留まることを知らない。

私はずっと東京に住んでいた。

でも父親の都合で大阪の高校に転校し、大学も大阪の大学に進学。

高校なんて三年の終わりで引っ越したから友達なんて出来なくて、大学でやっとできたのがみるきーだった。

大学では彼氏も出来た。

京都出身の彼は優しくて純粋で、すごくいい人。

だからパパも結婚をすぐに認めてくれて、
彼と結婚した。

みるきーも大学の時の彼と結婚したのだが、その時はあまり愚痴は言ってこなかった。

「もーほんま彩くんかっこいい!
なーぱるるもそう思わん?」

「…..うん笑」

むしろ惚気のほうが多かった。

なのに結婚して数ヶ月が経ってしまえばころっと変わる。

週に一度、私たちは会ってお茶するのだが、愚痴を言わないことはない。

「なー由依ちゃんにイライラしたことないん?」

「んーそういえばないかもね」

「なんでなん?私なんか喧嘩しやんことないで?」

確かに考えてみれば由依にイライラしたことは数少ない。

なんでだろ?
自分でもわからないくらい、由依に怒ったことなんてあまりない。

これを夫婦円満って言うのかな?

じゃあ逆にみるきーたちはギスギスしてる関係なのかな?

わからない。

「ほんまにもう離こ…..」

「こーら。今なに言おうとしてたん?」

離婚。

そうみるきーが口走ろうとしたのに、誰かの手がみるきーの口元を押さえた。

みるきーの旦那さんの彩さんだった。

「こんにちは、遥香ちゃん」

ニコッと私に微笑む彩さんによく愚痴を零すみるきーの気持ちが少しわかった。

「なんなん、仕事じゃないん?
私ら今女子トークしてんねん」

「じゃあ俺らも男子トークしよかなー?
なー由依?」

「おぅ」

聞き覚えのある声がしてその声の元をたどったら由依がいた。

由依、仕事じゃなかったん?

「….由依?仕事は?」

「今日は昨日夜遅くまで残って今日の分の仕事終わらしててん。やから今日は早く終わった」

そういえば昨日は帰りが少し遅かった

LINEで遅くなるって連絡きて、ちょっとだけだと思ってたのに深夜に帰ってきたっけ。

ちょっとだけ、ほんのちょっと
いや、本当はめちゃくちゃ寂しくて

今朝会った時も、少し冷たくしてしまった。

思わずキスしてしまいそうになったけど、目の前に2人がいる事を忘れてた

「なー、彩ちゃん。今日….」

「記念日、やろ?ちゃんと覚えてるよ」

「もー好き!彩ちゃん好き!
….あっ彩ちゃん、私ら邪魔みたいやし帰ろ?」

いやいや、私たちのが邪魔だと思うんだけど

「じゃあお二人共、有意義なお昼を楽しんで!由依、またな!」

「ぱるる、お茶はまた今度ね?
由依ちゃんと仲良く、素直にね?」

なんて言って2人は恋人繋ぎで帰って行った

でも私わかった。

みるきーたちって、あれだけ愚痴言ってるし喧嘩だってするけど

でもそれはお互いが素直に気持ちを伝えられてるからなんだ

それを思うと私たちはまだ未熟で、未だに恋人って感じなのかな。

「ぱるる、帰ろ?」

きっとみるきーたちはお互いを想いあってる。

それに嘘も疑惑もないし私たちだってそれはない。

私たちもお互いが大好きで、大切なで、特別な存在。

でもだからこそ私たちは大好き過ぎて壊してしまうかもしれないと、思ってるのかな。

これからはもっと素直になろう。

素直になって、お互いをもっと想いあったら、みるきーたちみたいな素敵な関係になるんじゃないかな?

私は由依から差し出された手をそっと握り締めて、耳元で囁いた。



「….大好きだよ」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ