短編

□アイ
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夜の児童公園

いつもなら誰かいるはずの場所も
雨が降っていれば誰も寄せ付けない。

だから私は傘もささずにブランコに座った

私には家族はいない。
愛なんて知らない。

いや、いないんじゃない。
正確にはいる。

なのに私は愛されることを知らない。

何故かって?
愛されなかったからに決まってる。

だから家族はいないことにしてる

愛を教わらなかった私はわかるわけなくて

だから私は、

目に見えないから愛なんて信じない。

そうやっていつもごまかしてきたんや。

これからもそうやってごまかして生きていく

誰の手にも心にも触れずに。

遠く遠くにただ埋めれているだけだった私。

それでいいそう思っていたのに
あなたに出会ってしまった。

私の上に傘をさすあなたは笑ってて

ただの1秒が永遠より長くなる。

魔法みたいに。

1つ欠けたままだった僕のハートがほら、
じんわり震える。

ありふれた日々がアイ色に染まって
横を見たらいつもあなたがいて。

「彩ちゃんはなにがすき?」

「…私?私は….美優紀は?」

「もぅ彩ちゃんに聞いてんのー!
私は、彩ちゃんが好きやで?」

この時私は、なんて言えばよかったんや?

私は美優紀が好き。
そう言ってやりたいのに、言えへん。

きっと私は初めからあなたを探していたんだ

なのに私はそばにいてもまだ寂しそうに滲んで、あなたを泣かせて

美優紀の側から離れてまた公園に来た。

そしたら美優紀は探し出してくれて
私を抱きしめる

「….彩ちゃんの…..バカ」

それが愛おしいのに、怖い。

夢のように今にも消えてしまいそうで。

瞳閉じてもまだ伝わる温もりが確かにある

美優紀の手に触れて、心に触れて
ただの1秒が永遠より長くなる、魔法みたい。

美優紀は泣いてそして笑った。

1つだけの愛がやっと私のハートに今、
じんわり溢れる。




「美優紀、愛してる」

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