短編

□全ては貴方から
1ページ/2ページ

《美優紀》


『ほんまかっこいーでな!
あのバッティング!』

なんなんあれ?

彩ちゃんは私がおるにもかかわらず
ずっと女の子と野球の話。

そらいーよな。

可愛いし野球好きやったら話し合うし、いつもやったらこんなんでモヤモヤしやんのにな

なんでやろ。

彩ちゃんと付き合い始めたのはつい最近。

同じグループで他の人よりは仲良くて彩ちゃんから告白してきた。

別に好きちゃうかったけど、まぁいっかってノリで付き合い始めた。

ノリで付き合い始めたっていうのもあってか私は彩ちゃんに対して冷たいらしい。

『美優紀、明日映画いかん?』

「明日バイト」

『じゃあ日曜いこ!』

「その日ママと買い物」

『…そっか』

まぁ冷たいのは付き合う前と変わらんからなんとも思わんけどさ

でも…なんなんこのモヤモヤ

『どしたん?みるきー』

「…....あかり」

『ぼーっとしてるけど』

「…朱里はさ…りかちゃんが他の女の子と楽しそうにしてたらどう思う?」

『んーそら嫌やけどさ、朱里はりかちゃん信じてるかな。まぁそれで朱里に構ってくれやんのは嫌やけど』

信じるか…。
てか私なんでこんなに彩ちゃんでモヤモヤしてんの?

ただのノリやのに…。

『美優紀!』

彩ちゃんは女の子と話が終わったんかこっちに駆け寄ってきた。

いつも通り、いつも通り接しよう

『朱里が美優紀がぼーっとしてるって言うてたけどいける?』

彩ちゃんは私のおデコとおデコを合わせる。

やめてやそんなん。
教室やで?恥ずかしい。

「…恥ずかしいから…やめて」

『ごめんごめん!
でも辛なったら言いや!』

そう言って彩ちゃんはまた女の子のほうに戻っていく。

あっ女の子が彩ちゃんに耳打ちして
彩ちゃんの顔赤くなった。

なんでなん。
私と付き合ってるんやったら
そんなことしやんといてよ

あかん、限界や。

「…彩ちゃん!!!!」

気づいたら彩ちゃんに近づいて
彩ちゃんの名前を叫んでた。

教室の空気が張り詰める。

そらど真ん中で叫んだらみんなの注目の的にはなる。

けど今はそんなこと考えるほど余裕なんかない。

今は無我夢中で彩ちゃんの口を塞いだ。

『……っん…美優紀?』

「…嫌や」

『ん?』

「…嫌や!彩ちゃん!
私以外の女の子と仲良くしやんといてよ!」

『えっ美優紀?いつもと違うやん。
やっぱ熱あるんちゃ……』

「イライラすんねん!
彩ちゃんが他の子と話すだけで
彩ちゃんが他の子に笑いかけるだけで不安で胸が痛くなってモヤモヤして。自分でもわからんくなるぐらい、彩ちゃんが好きや」

私は思ったことを全部彩ちゃんにぶつけた。

壊れかけてた歯車が動き出したみたいに口から出る言葉は止まらんくて

でもそんな私を彩ちゃんは抱きしめた。

『俺は美優紀しか見てへん。
美優紀しか好きじゃない。
俺は嬉しいよ。美優紀が気持ちちゃんと言葉に出してくれた事。
初めて好きって言ってくれた。
美優紀……好きや。愛してる』

『…彩ちゃん……私もやで』

きっと私はもっと前から彩ちゃんに惚れてた。

いつもみたいに冷たくできひんぐらい好きで好きで仕方なくて
独占したくなる。

こんなに独占欲が強くなったのはたぶん、彩ちゃんと出会ってからやと思う。

冷たく接してしまうのも
妬いて独占したくなるのも

全ては彩ちゃんやからやねん。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ