長編

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15年前、俺が2歳の時

両親はいきなり俺の目の前から消えた。

俺を残したまま。

そっから俺は親戚中をたらい回しにされた挙句

養護施設に入れられた。

養護施設に入ったんは3歳の時。

両親疎か知ってる人はおらんし
訳も分からず入った養護施設に
慣れるはずもなく

孤独やった。

なにもしらん俺は
いつか両親が迎えに来てくれる

そう思ってた。

でもある時養護施設の人に

「ママとパパはどこいったん?」

ってふと聞いた。

養護施設の人は言ったんや。


彩くんのパパとママは彩くんを捨てたからもう帰ってこやん。


言葉が出やんくて
目の前の世界が真っ黒に染まる。

その頃からかな
俺は心を閉ざすようになったのは。

俺が養護施設に入って3年の月日が流れようとした頃

ひとりの女の子が養護施設に入ってきた。

その子は俺よりちっちゃくて
多分歳下やと思う。


身体中アザでいっぱいでやせ細ってて服はボロボロ。

養護施設の人には美優紀ちゃんって名前だけ教えてられて

仲良くしたってって
今日から彩くんの仲間やでって

言われてた。

当時の俺にはそんなことどうでもよくて

興味なんてさらさらなかった。

てか持ちたくもなかった。

でもある日聞いてしまった

『俺を知らん人が迎えに来る』

施設の人が電話で言ってた。

だから俺はずっと練ってた脱走計画を実行しようと

ひとけのない施設の横のフェンスの下に穴を掘り続けてたら

いきなりその女の子が

「…なにしてんの?」

って話しかけてきた。

でもその子の目を見たら光なんかなくて真っ黒。

俺と一緒の匂いがした。

「…脱走するんやったら
朝の方がいいで。先生こやんし」

的確なアドバイスや。

たぶん何回も脱走してきたんやろう

それから俺はこの子に
従うようになった。
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