長編

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屋上の扉を開けたら
夏終わりの風がブワッて入ってきて

目がぼやけた。

ぼやけてる目で前を見たら

屋上を囲ってるフェンスの
向こう側にあいつがおった。

「…茉由!なにしてんねん!」

『…彩俺な、いじめられててん。
彩には言ってなかったけど』

あいつは振り向かんと前を
向いたまま言ってた。

『…俺ずっと友達できやんくて
彩と友達なって嬉しくてさ
気づいたら色んな人に自慢してた。
彩はギターも弾けるし運動神経いいしめちゃくちゃかっこいい!
って言ったりしててさ
でもついうっかりいらんことまで
言ってしもてた』

『…養護施設とか両親のこと。
それがあいつらに伝わってな
俺は良い鴨にされた。
だから体育祭のときあいつらに命令されて彩を舞台にだしてん。
でも彩があんまりにも上手くて
女子から人気出たから俺話違うって
あいつらに逆上されてもた』

『だから彩のこと、無視した。
俺アホやからさ彩のこと
無視したらいじめられへん。
俺らが仲悪いってあいつらに
伝わったらもういじめられへん
そう思ってた。
でも現実はそう簡単にいかんな
あいつは俺にもっと要求した。
彩の弱味みせろ教えろって』

『後悔しか残らんかったわ。
こうなる事予想出来たはずやのに
なんでこんなアホなんやろうって
今日までずっと自分の事攻め続けた
でもそれも今日で終わり』

「…終わりってどーゆうことや?
お前……本気で死ぬんか?
そんなんしても…『もう限界やねん!!!』

『…彩、お前は何でいじめられも
どうでもいいふりできるん?
なんでそんなに強くおれるん?
俺弱い人間やからさ、もう無理や。
…彩、さよなら』

その言葉を最後に
茉由は屋上から飛び降りた。

たぶん泣いてたんやろうな。

あいつが立ってた場所に
涙の痕があってん。
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