+ Short Story +

□雨
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ボクシングの事ばかり考えているように見えても、ちゃんと私の事も考えてくれている。

『甘え下手なの、変わらないね』

でもそんな彼の短所も好き。見た目がどうとかボクシングが強いとかどうとか、そんな事は関係ない。
私はボクシングのルールさえ知らない。あんな危険なスポーツをやって何が楽しいのかも分からない。
でも私が彼の側に居るのは単純に彼が好きだから、ただそれだけだ。

「………理恵…………」

小さく名前を呼ぶ彼。起きているのかと思えば寝言のようだ。

『私の夢でも見てるの…?』

スルリ、と相手の髪に指を通す。何度もそれを繰り返す。
どの位の時間が経っただろう、流石にお腹が空いてきた。時計を見れば気づけば針は12時を指していた。

『ん…寝ちゃってた……』

私も本日二度目の起床に頭はボーッとしている。モゾ、と何かが動いた。どうやら彼も目を覚ましたようだ。

「…腹減った…」

『…作ってくるから退いて、重たいよ』

黙り込んでは一向に動く気配のない彼。押しのけて立ち上がるもズルズルとくっ付いてきた。重たい…

『何食べたい?』

「焼きそば」

本人からのリクエスト通り渋々カロリーを気にしながらも野菜を沢山入れた焼きそばを作った。

『完成〜!』

「美味そうだな」

そう言う彼からグルグルと腹の虫が鳴いた。

『そんなにお腹空いてるの?ほら、食べよう?』

食卓に作りたての焼きそばを並べては箸を渡す。いただきます、と2人声を揃えては食べ始めた。

「……美味い」

ただ一言、それだけを言うと黙々と食べ進めた。ごちそうさま、と呟いては再びソファーでゆったりと過ごす。

『…雨、また降り出しちゃったね』

「天気予報は朝から晩まで雨だって言ってたぜ?」

『朝から夜まで雨って分かってたのにロード出たの?』

「…お前の家で雨宿りできるだろ」

そう言ってはフイ、と顔を逸らす。こういう時は決まって照れている。

『私の側に居たいだけでしょ?』

「………もう黙ってろ」

ニヤニヤと笑っては顔を覗き込んでやった。その瞬間---チュ、と音を立てては口付けされた。

2人の甘い1日は此れから始まる…









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