+ Short Story +

□一緒に帰ろう。
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『本当に私って馬鹿…何で素直になれないんだろう』

盛大な溜息を吐き、私は途方に暮れていた。

「あ!理恵さ〜ん!」

そう言って天使が駆け寄って来た。ああ…今日も可愛いなぁ…

『一歩、おはよう!』

ニコッと笑ってみせては一歩は頬を赤くした。

「理恵さん、今日も可愛いですね!」

柔らかな笑みを浮かべて笑う一歩に私も答えた。

『何言ってんの、一歩には負けるよ!』

そんな言い合いをしては宮田が不機嫌そうにやってきた。

「あ!宮田くん、おはよう!」

「…」

一歩の元気な挨拶を無視する宮田を一喝した。

『ちょっと、宮田!挨拶くらいしなよ!…全く…』

心配になった私は宮田の元へ駆け寄った。

『ねえ、何で機嫌悪いの?』

「うるせえ、幕之内の所にでも行ってろよ」

そう冷たく言い放たれた。意味が分からない。

『はあ?何でそこで一歩の話が出るわけ?』

私は思った疑問を宮田にぶつけた。

「お前がアイツと仲良く話してるからだろ!」

宮田は顔を真っ赤にして言ってきた。更に謎は深まるばかり。

『…つまり、どういうこと?』

「だから…お前は幕之内が好きなんだろ?…アイツとばっかり一緒に居るし」

私は考えた。考えてみたがコレしか浮かばない。

『…嫉妬?え、何?宮田、嫉妬?』

ワザとらしく嫉妬という言葉を強調してみた。

「うるせえ!何で俺が嫉妬すんだよ!」

嫉妬ではないという宮田に私はガクッ、と肩を落とした。

『期待させといて落とすのヤメテヨネ〜』

フイ、とそっぽを向いたその瞬間---ギュッ。と後ろから包み込まれた。

『え…?み、宮田…!?何やって…!』

カァアアッと顔が熱くなるのを感じた。

「…嘘だよ。嫉妬…してた」

宮田は小さくそう呟いては抱きしめる腕の力を強めてきた。

『…期待していいの?好かれてるって』

「勝手にしてろよ、好きだ馬鹿」

嬉しくて溢れそうになる涙を目に溜めて、小さく笑っては向き合う。

『ゴメン、私も好き』

少し背伸びをしては相手の唇に自分の唇を重ねた。

「っ…何で謝ってんだよ」

目の前で顔を真っ赤にさせるこの人は今日から私の大切な人。

『やっと手が届いたよ。ありがとう。好きだよ、一郎』

私の言葉を聞いて相手はポカンとしている。

「フッ…俺もやっと手が届いたよ。可愛い女神に」

『ちょっ…女神とか褒めすぎ』

「褒めてねえよ。調子乗んな馬鹿」

思い切り足を踏んでやった。

「テメ…!何すんだ…!」

痛そうに顔を歪める宮田。

『私に馬鹿って言った罰!』

ニシシ、と笑い舌を出しては『置いて帰らないでね?』と何気なく一緒に帰る約束をして控え室を後にした。









END
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