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□雨
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部屋に鳴り響く雨の音。
雨は嫌い。雨は彼と会わせてくれない。
---大好きな彼と。
『ん……雨……』
耳障りな雨の音に目を覚ましては時計を見ると短針は9を指していた。今日は休日だからゆっくりできる…が、この雨では家から出るのは難しそうだ。
『雨、かぁ……』
ボソ、と呟くと呼び鈴が鳴った。
『はいはいは〜い…』
未だ襲ってくる睡魔と戦い、目を擦りながら---ガチャ、と玄関の 扉を開けた。
「おはよ」
『え…あ…おはよう…』
寝起きの回らない頭で慌てて挨拶を返す。目の前にはずぶ濡れになった彼の姿があった。
『…なに…してんの?』
「…雨宿り、していいか?」
『…ああ、雨宿りね。いいよ』
私は彼を家に入れては風邪を引いてしまってはいけないと思いシャワー室を貸した。
「助かったぜ」
暫くしてシャワーを浴び終えた彼はそう言うと髪から水を滴らせては私の隣に座った。
『髪はちゃんと拭かなきゃ風邪引くよ?』
「…眠い」
ボソ、と呟く彼にヤレヤレと溜息を吐いた。仕方なくタオルを取りに行っては再び隣に座る。
『世話が焼けるんだから…』
そう悪態をつきながらもタオルで彼の髪を拭いてあげた。彼の髪はサラサラとしていて、とてもいい匂いがする。心地がいいのかウトウトとし始める彼。
「お前の家に…雨宿り…ってのも…悪くねえな…」
眠気も限界に来ているのかポツリ、ポツリと言葉を発する彼。そんな彼を見て私は両腕を広げた。
『…もう雨、上がってるよ』
「……まだ降ってるだろ……」
雲の間からは光が差していた。彼は私の腕の中で静かな眠りについている。これも彼なりの甘えなんだろう。