+ Short Story +
□嫌い→好き
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『たのも〜う!』
珍しい女の子の声に皆、手を止めた。
「…女がボクシングジムに何の用?」
歳の近い女の子が気に食わず、冷たく声を掛けた。
『何の用って…入門希望だけど、会長は?』
キッと鋭い目で女の子を睨んでもその女の子は動じない。
「…会長は外出中。君みたいな小さな子にボクシングはまだ早いでしょ。出直せば?」
殴り合いが女なんかに出来る訳がないんだ。
『そういう君も小さいよね!君が出来るなら私にも出来るよ!』
カチンときてビビらせてやろうと拳を振り上げたその時-----
「宮田。男が女に拳を振るうものではない」
ガラリ---と大きな音を立ててドアを開けた会長がそこに居た。
「…会長…すみません」
ムスッとした俺はニコニコと笑う女の子を再び睨んだ。
「で、小娘。こんな暑苦しい所に何か用かの?」
会長がしゃがんで目線を合わせては今度は鷹村サンが寄ってきた。
「ジジイ!ガキの相手はこの俺様に任せろ!」
途端---「貴様は黙っとれ!」と一喝された。
『私、入門希望なの』
その言葉を聞いた会長は驚いた様に大きく目を見開いた。
「此処がどういう所か分かっての入門か?」
会長の言葉に対し、女の子は信じられない返答をした。
『私,ボクシングで世界が取りたい』
会長は気に入ったらしく「今日からみっちり特訓じゃ!」と女の子の髪を乱暴に撫でた。