國立図書館

□電子のあだ名はデン子ちゃん
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 高校二年生の央夜には好きな人がいる。
一年前、近くに引っ越してきた大学生の電子である。
近所の人からは「デン子ちゃん」とよく呼ばれている。
朝は大学に、夜は何か仕事をしているらしい。いつも夜には住んでいるアパートには居ない。
この町では最近、事故による死亡率が急激に増加していて気味悪がって出て行く人も増えてきている。
そんな中でデン子は町を出て行くこともなく普通といえば普通に生活している。

 「で、電子さん……折り入って、話があります……!」
桜の木が葉桜に変わる頃、央夜は電子を近くの公園に呼び出していた。
「なあに、央夜君? 真剣な顔しちゃって」
「あの!」
「わ!」
「す、すいません……」
「ホントにびっくりしたよ〜」
くすくすと笑うデン子の可愛さに悩殺されそうになるが、ここで逃げてはいけないと持ちこたえた。
「聞いてくれますか……?」
「うん、聞かせて!」
「一年前、あなたはここに引っ越してきました」
「うん、いろいろとあってね」
「僕は、あなたが好きです」
「……え?」
「あなたのことが好きです、大好きです! あなたを見たその時から!」
「僕と付き合ってください」
「うーん……そうだ! 一つだけ約束してくれる?」
その時、央夜は自分の気持ちが伝わったと思って有頂天になっていた。
「はい!」
「今から言うことを聞いても好きでいてくれる?」
「もちろんです!」
「じゃあ言うね」
「実は……」
(実は……男なんですとか言わないよな……)
(でっ、でももしかしたら実は女の子が好きだったとか!?)
(まさかな……でも!)
「実は私……」
「はっ、はいッ!」
央夜に緊張が走る。
「実は私死神なんだ」
「……はい?」
央夜の頭の中で、彼女の理想像が音を立てて崩れ落ちた。

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