禁じられた遊び

□禁じられた遊び Book
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ここでは、ぶつかりあいなんて、トラブルでも事件にも入らない。新入りは、標的になりやすい。
彼も変わらない。あの本の時、あいつ、違っていた。確かに一瞬だけど閃光と殺気が、走った。簡単にやられるとは思えなかった。しかし、彼はリンチに合い、口を切った。
ところが、口切ったまま、面会室に連れて行かれる時、下を向いた彼が微かに笑ったのを、見たんだ。
訳がわからない?
「計算のうちだろう?」
Numberは、涼しく言った。「Book、ショウの話、聞いているだろう?」
若手実業家が未成年を拉致監禁して父を刺した。
「スズキの獣に魂を喰われたって。」
それが、彼だというのか?「テツ?ただのガキだよ。俺と同じように」
「同じさ。獣ってつうのも、非論理的だね。」
セイが口を開いた。
「割り切れるものばかりじゃない。」
「俺達には、ただのテツさ。」Numberが答えた。
「そうだよね…」
俺も、そう答えるしかなかった。

俺達は、話した。彼のアイデアは面白い。閉じられた世界でも、広がるのを感じた。
「俺、テツが踊れって言えば、踊るよ!」
「そんな価値無いんだ。」下を向いた彼。
「僕さ、ずっと、走った、踊った。踊らせたこともあるよ。
僕は…ただの化けものだ。
皆は、始めることができる。
誰かに、踊らせるのでない。
Bookは、自分で、踊る、走れるよ。」
「俺、イヤ、皆、本気さ、あんたと…」
「僕は、走れない。踊れ無いんだ。」
彼を見つめた。もう、何も答えなかった。




「おい、テツが動くぜ!」Numberが、そっと告げた。
「俺だって、その位、計算できるよ。」
リンチされた相手に罠を張る。
自分の躰を餌にする。
「俺、Book、お前は止めるって思ったよ。お前のソフィアだからね。」
「俺の?何、言うのさ…
止めたいさ。
でも、あいつ、自分をとことん、壊さないと、先に進められないって思ったよ。
あいつ、何をしても、テツさ。
俺は、見守って、テツが歩き始めるのを待つだけさ」
「お前、ピエタみたいだ。」
ピエタ、聖母ねぇ。
思わず、微笑んだ。
「俺さ、数字しかわからないけど」
いつも、ふざけているNumberが真面目に言う。
「スズキの獣にしろ、ショウにしろ、あいつは、その人の隠された願望を引き出すんのだろうって、思う。
俺さ、ソフィアカンパニーの話、あれにしろ、
お前の優しさにしろ、
あいつが引き出したって。そう、思うね。」
「…Number、あんたこそ、哲学者みたいだ。」
肩を叩いた。
そうだね。俺にも、誰かを心配する気持ちってあったのか…。
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