禁じられた遊び

□禁じられた遊び 1 僕
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手錠のヒヤリとした感覚、鎖が動きとともに不規則な音を鳴らす。少年院の入り口が、重い音をたて閉ざし、オートロックの機械をジーて鳴らした。
僕は、窃盗で3ヶ月の刑期をここで過ごすこととなる。僕は今17歳。視線を背中に受ける。叔父のスズキは、僕を探すため、一体、情報を公開したのか?ひそひそと、話し声が聞こえる。構わないさ!ただ、真っ直ぐ前を歩くだけだ。

独房に通される。何もない。寝具があるだけ。横になって見る。天井って何処も変わらない。学校も病院、研究室…。不意に自分の部屋を思い出して、横に向きを変えた。ドアが見える。足音がしてくる。咄嗟に眼が見開き、全身の感覚を集中させた。滑車のがらがらと滑る、金属と何かが触れあう音、二人いや、三人の男の足音だ。一人は大きく、一人は微かに歩き方にズレを感じる。ドアの前に止まった。僕は、息を潜める。ガチャンと小窓が開くと食事が入れられた。男達その他の音とともに、去って行く。僕は、やっと、全身の力を抜く。あぁ、放浪と逃亡の生活は、終わったんだ…。
起き上がり、食器に近づいた。水だけ飲み、他に手を付けずに、寝具に戻った。また、天井を見つめ、スズキを思い出していた。スズキの包囲網は、完璧だった。僕がプログラムしたのだからね。スズキの目の前で、僕は窃盗で捕まった。そうしなければ、スズキに捕まったからね。スズキ、見つめていた。「フフ、僕は、捕まらないよ!フフ!」スズキ、スズキが悪いのさ。
「おい、起きなさい!」僕は、少し眠っていた。看守に連れられて行く。野次馬達の声が今度は、はっきり聞こえてきた。
「スズキ…ブレイン…」
「まさか、ガキだ」
「女?色白のべっぴん」
「唇も紅いよ」
「あれが?ブレイン?」
「きつい目、ありゃ男だ」 笑いたくなるのをこらえて、僕は歩いた。やがて、別室に連れられた。背広の男達、オリエンテーションかな?と、内心あざけりながら、冷静な表情で、座った。さあ、始まりだ!

翌日より、更正プログラムに沿った生活が始まった。考えて見れば、同世代の交流は、最後は何時だったか?目立たないよう、振る舞うことは、この放浪生活で、身につけた。数人、面白そうな人を見つけたが、それは、別の話で。
全く、異質なものを嗅ぎ分ける奴っているものさ。プログラムの狭間に捕まった。身体が大きく、取り巻きがいる。群れるって、弱いものの本能だね。
「なんで、来たんだい?お嬢ちゃん!」次の瞬間、脚をすくわれ、床に転がった。口の中に、錆の味が広がった。唇が切られ、血を流しながら、ゆっくり片膝を立てた。顔は下げたままだ。笑っているのが、バレルとまずいだろ?
「おい、何をしている!」看守に見つかった。随分早く見つかったものだね。これからだったのに。奴ら、相当、バカなのか。
「こいつ、転んで…」
「おい、お前、来るんだ」奴らの言い訳等、看守は聞いていなかった。看守は、僕の腕を引き上げ立たせると、僕に歩くよう急き立てた。奴らは、舌打ちして去って行く。
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