フラワーアレンジメントの部屋デスノート月L

□クリスマスプディング L
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クリスマスプディング
イギリスの伝統的なお菓子です。




 捜査本部のホテルの窓から外を眺めていた。
白い背中が丸まって、羽根の跡のような骨が見えた。
まるで、世間の事など興味がないような竜崎が外を眺めている。
なにか、珍しいものを見たような気がして立ち止まった。

「松田さん、何か、用ですか?」

 振り返りもせず声をあげたので松田はどきっとした。

「いやあ、別に。」
 そう答えながら山積みの資料を持ったまま竜崎の隣で窓を見つめた。
「竜崎、何を見ていたんですか?」
「見えないものです。」
「?見えないもの、ですか。」

 窓にはクリスマスイルミネーションに輝く街が見えた。
 恋人や友達たち、家族が笑顔でいきかっていく。
「松田さんは、仏教徒ですか?」
「?一応、そうですかね。地元もお寺の檀家ですし、墓参りもするし、お坊さんの説教も聞きますから。
言われるまで、あまり意識していませんでしたけど。」
「そうですか。日本人にしては、真面目な方ですかね。…この国にはスピリチュアルな下地が失われている。それでも、クリスマスを祝うのですね。」
 竜崎に真面目だなんて言われるとは思わなかったので、かえって驚いてキョトンする。
 そんな松田を見てふっと笑う。
「この季節、思いだすのは、社説です。『サンタクロースは本当にいるのですか?』」
 8歳の少女の手紙に丁寧に社説で返答した話だ。
「見えないからっていないと、言えない。サンタクロースも、愛も神も。」
 またしても、らしからぬ言葉が出てきて、松田は面喰う。
 竜崎が、愛?
「いいんです、忘れてください。そこにワタリの作ったお菓子があるので切り分けて食べてください。」
 竜崎は、外を見たままだった。
 たくさんのドライフルーツが入ってケーキにナイフを入れ、一口、ほおばった。
「?竜崎、なにか入っていますよ。」
 口から出すと金色に光る小さな天使の人形だった。
 初めて窓から竜崎が離れた。
「おめでとう。クリスマスプディングにはプレゼントが隠されていて、それを当てた人には幸福がおとづれるんですよ。」
「え?僕が当てちゃっていいのかな?」
「当てたんだからいいんですよ。そうですね、松田さんには、強運の女神が付いているのかも。馬鹿なぶんだけ。」
 いたづらそうに見上げる竜崎に、カチンときながらも、いつもの竜崎だなと感じていた。
「じゃあ、仕事してきます。」
 松田は、一度置いた書類の山をもう一度持ち直した。
「御苦労さま。よろしくお願いします。」
 そっけなく立ち上がると、また、竜崎は窓を見つめていた。
 もう、声をかける隙はなさそうだった。仕方なく部屋をでようとした。
「松田さん、メリークリスマス。」
 竜崎の声に振り返ったが、竜崎は窓を見つめるだけだった。
「竜崎も、メリークリスマス」そう、返事して今度こそ部屋を出て行った。


「 O Come,All ye Faithful 」
 小さな声で口ずさむ賛美歌。
 
 神のみこはこよいしも、ベツレヘムに生まれたもう

 キラ、お前は見えないものも正義という名で裁くのか。
 見えないお前を引きづりだすのか、私は。
 見えるものがすべてではないよ。
 キラ、気づけ。
 お前ほど賢い頭脳を持ちながら、見えるものさえ見えなくなっているのか。

 別のテーブルにはセンター入試の受験票が置かれている。
 情報を操作して夜神月と同じ教室で受験できる。
 そうさ、直に、お前を、その時見よう。
 見えるものと見えないものの中で、真実を見つけるのはどちらが早いだろうか。。。

 ワタリの祈りのクリスマスプディング
 もう、仕掛けはなくなったプディング。
 それでも、もう引き返せないから。









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