「楓だもん!」オリジナル小説

□楓だもん! 5 綿の実
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「夏休み、どこか行こうよ!」
夏休み、生物室でフィールド調査をまとめながら、楓がだだをこねていた。連日、夏季講習と生徒指導の活動で、榊は、辟易していた。生物準備室で、ぐったりとソファーに横に寝転んで楓の声を聞いている。
「お前達と違って、仕事しているんだよ!少しは、クラスメイトと交流しなさい!」
楓は準備室の榊を覗きこんだ。
「クラスの友達とは、明日、お祭りに行くの。」
そういえば、夏祭りの季節だなぁ…と榊はぼやく。生徒指導で巡回をすることになっている。夜祭りの巡回は中学生まででいいのに。榊は、はぁとため息をついた。
「まあ、悪さしないだろうが。俺も巡回しているから。」
「ふーん。祭りって、悪さをするの?」
楓は、至って真面目だ。
「フウくん、夜祭りに出かけて、調子に乗って、悪ふざけする人もいるのよ。」
生物室から、理子が返事する。パタパタと走って理子も準備室にやってきた。
「ちょっと、フウくん!まさか、誰と行くの?」
「えーと、クラスの人だよ?」
「…だから、誰?」
「?」
楓はキョトンとしている。理子は榊に助けを求めて視線を投げた。楓は以前、体調不良で無抵抗な状態の時、クラスメイトから、キスマークを付けられたのだ。
「理子…楓の問題だろ。」
「先生!以外と白状なのね。フウくん!自分の身は自分で守るのよ!理子、チアガールの選手権で、付いてあげられないけど。大丈夫?」
「えーと、祭りって、そんなにサバイバルなの?」
理子は、楓の天然さにハラハラしていた。
榊は二人のやり取りを見ているだけだった。
理子、楓の天然さは今に始まったことではない。自分で、危険を察することも、必要だから。
アイスコーヒーの氷がカランとなった。
「理子が、凱旋したら、桜子さんも誘って、出かけようか。」
「うん!」
無邪気な楓に二人でため息をついた。
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