「楓だもん!」オリジナル小説

□楓だもん!3 水中花
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プールの水が、キラキラと、輝いていた。生徒達は、プールサイドで、準備運動をしていた。
「楓姫…。やっぱり、男だったんだ。」
クラスメイトの柳が、がっかりした表情で言った。
「そうだよ?僕、ずっと男だけど?」
楓は首をかしげた。白い肌ピンクの乳首で、ホッそりしているが、もちろん、胸はない。骨格は、少年から青年に成長途中だった。
「楓、柳はずっと幻想抱いていたんだから。そっとしとけば!」同じくクラスメイトの楡が言った。
「ふーん。柳くんは、僕が、男だと、嫌なの?」
楓は、柳をじっと見つめた。
「イヤ、その、あの…」
柳は、真っ赤になった。
「おい!集まれ!始めるぞ!」
楓は、スーッと水の中に滑り込んだ。クロールをきれいなホームで泳いだ。コーナーをターンする。しかし、浮いて来なかった。
いや、浮いてきたが、コースを外れプールサイドに上がろとして動かない。教師が水から引き上げた。
青ざめ、吐き気があり、息が荒かった。
「保健室に運んで!」


榊は、生物準備室で、アイスコーヒーを飲んでいた。プールの歓声が聞こえた。元気で、いいねぇ…。
廊下を走る音がする。授業中だ、何処の生徒だと、生物準備室のドアを開けようとした。榊が手をかける前に、ドアが開いた?
「榊先生!養護の先生が呼んでます。楓がプールの授業中、具合が悪くなって!」
「分かった。直ぐ、行きますから!」
カバンを取り出した。ファイルをパラパラ開いた。
“楓の注意事項”
「楓のバカ!プールは、禁止事項じゃないか!」

楓の保護者、桜子は、今週から出張して自宅を開けている。楓は、カエデの性質を持っている。詳しくは、桜子も楓も、極秘で話さないが、植物と話しメープルシロップのような香りがする。出張中の注意事項を桜子が榊に托したのだ。
“塩素によって気分不快になるのでプールは禁止する。”
「全く!楓のバカ!」
廊下を授業時間、無視して走っていた。
保健室に到着して、ベッドに駆け寄った。
「楓!わかるか?」
「…先生、気持ち悪い…」青ざめ、唇を震わす。タオルに包まれている。つーんと塩素の匂いがする。
養護教諭が側に来た。
「榊先生、保護者から、何か聞いていますか?」
「ええ、塩素中毒です。」
「塩素中毒?」
まあ、あり得ない。疑問を無視して、手当てを始める。
「体を拭くのでタオルを用意して下さい!」
「楓、ミネラルウォーターだ。吐いても、いいから飲むんだ!」
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