少年Lの事件簿

□ハーモニー・グリーフ*
1ページ/14ページ



人々は、街を行き交う。様々な理由。仕事に、買い物、カルチャー、スポーツ…。当たり前に、溢れている悪。金、欲望、感情、暴力、そして…


「お母さん、絵本、読んで!」
「図書館ね。歩いて行きましょうか?」
五歳の男の子は、笑顔いっぱいで、母親の手を握っていた。復活祭が近いせいか、街には、人々が歩いていた。ふと、子供の手が離れたことに気付く。子供は、笑いながら、走っていた。「坊や?何処へ行くの?」慌てて後を追うが、全速力の男の子のスピードに、追いつかない。
「誰か、あの子を止めて!」見ると、人々が叫んでいる?小さな子供達が、皆、同じように走り消えた。あの先…
河だった。


人々が行き交う午後だった。街を歩いていた子供達、親の手を振り切って、笑いながら、河に飛び込んで行った。3月といえ、河は零下だった。親達の叫び声、助けを求める泣き声に当たりは、騒然となった。助けようとする大人達も含め、死者行方不明者、五十人を越す惨事となった。
河が、子供を呼び飲み込んで、彼岸へ連れ去った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ