circus -第二幕-
□#01 帰還
2ページ/9ページ
まずはアスナの元へ向かった。
アスナは埼玉県所沢市の大きな病院に収容されていた。
何度かお見舞いに訪れているため、慣れた手つきでロビーで通行パスを発行してもらい、エレベーターに乗った。
彼女は最上階の病室にいた。
ゲームと同じ栗色の髪が美しくベッドに広がっている姿を見たとき、私は病院にも関わらずわんわんと泣いてしまった。
その時一緒にお見舞いに来ていたキリトが私を慰めた。
まだ終わっていないのだ。SAO事件は。
私がアスナの姿を見ていると後ろでドアが開く音がした。
そこに来たのはキリトだった。
『キリト。』
「##NMAE1##も来ていたんだな。」
『うん。』
それから二人何も語ることなく、アスナを見つめ続けた。
『キリトはどう思う?まだ300人が帰ってきてないこと。』
「茅場晶彦は確かに全プレイヤーをログアウトさせたと言っていたからな…。あの時に茅場が嘘を吐くとも思えないしな…。」
『だよね…。』
そういってると再び扉が開く音がした。
と、そこに現れたのは恰幅のいい男性だった。
「ああ、桐ケ谷くんに敷島くんも来ていたのかね。いつもありがとう。度々すまんね。」
「こんにちは、お邪魔してます、結城さん。」
『こんにちは。』
「いやいや、いつでも来てもらって構わんよ。娘も喜ぶ。」
入ってきたのはアスナの父親、結城彰三氏だった。
彼は総合電子機器メーカー≪レクト≫のCEOだった。
それを初めて聞いたときはキリトと一緒に仰天したものだ。
アスナはお嬢様だったのだ。
「社長。」
ふとカーテンの隅から現れた男性がいた。
「ああ、彼とは初対面だったね。うちの研究所で主任をしている、須郷くんだ。」
「須郷伸之です。よろしく。」
「桐ケ谷和人です…。」
『敷島桃香です。』