circus -第一幕-
□#08 黒と藍の剣舞T
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「おい、キリト。お前金には困ってねぇんだろ?
買い取るって自分で食おうとは思わんのか?」
「思ったさ。多分、二度と手に入らないしな。」
「だったら…。」
「でもなぁ、こんなアイテムを扱えるほど、両リスキルを上げてる奴なんて…。」
そこまで言ってキリトはクルっと後ろにいたモモに振り返った。
「シェフ捕獲。」
そういってキリトはモモの手を握った。
『しぇ、シェフ…?』
「俺たちが焼いても焦がしちまうだけだしな。」
そう話していると、急に私に向かって抱き着いてきた相手がいた。
『痛いよ、アスナ…』
「あら、ごめんね。今日も可愛いわ、モモ。」
『アスナは綺麗だよ』
そうお互いを褒めていると、"コホン"と咳払いを一つアスナの後ろにいるプレイヤーがした。
「シェフ、2人目捕獲。」
そういってキリトは今度アスナの手を握った。
片方ずつ私とアスナの手を握っていたキリトはアスナの後ろのプレイヤーからの視線に気付き、慌てて手を離した。
「なによ、それ。」
「あっ、珍しいな、アスナ。こんなゴミだめに顔を出すなんて。」
「なッ…!」
「もうすぐ次のボス攻略があるから生きてるか確認しに来てあげたなんじゃない。それにモモにも会いたかったし。」
にこっと私に向かって微笑むアスナはさながら天使のようだった。