circus -第一幕-

□#02 踏み出す一歩
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――




そんな私の生活に一筋の光が降りかかった。





空腹から、簡素なパンでも買おうかと、宿屋の2階の部屋から出て、1階の食事処を通り過ぎようとした時だった。





後ろから、手首をグッと掴まれた。






『ッ!?』





私は一瞬でこの力は男性プレイヤーだと気付いた。




そして、巷で聞くごく少数の女性プレイヤーを狙った犯罪じみた行為をするプレイヤーのことを思い出して、一気にゾワッと鳥肌が立つような悪寒を感じた。


「お前…桃香か!?」


『もしかして…、トウリ?』



ーーー



手を掴んできたのは公式サービス初日に会う約束をしていた、トウリだった。



「やっと見つけた…、ずっと宿屋にいんのか?」


『…うん。フィールドなんて怖くて出られないよ。』


「そうやっていつまでも宿屋に引きこもってる訳にもいかねぇだろ?」


『トウリは怖くないの?』


「怖いさ。でも、引きこもってるだけじゃ現実世界に戻れないからな。」



『トウリは強いね…ステータスも心も…』


「なぁ、モモ。俺が武器の扱いを教えてやるからフィールドに出てみないか?」



『えっ…。』



「無理しなくてもいい。明日返事聞きにまたここに来るから。ゆっくり考えてみてくれ。」



そう言い残してトウリは宿屋を出て行ってしまった。
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