circus -第一幕-
□#01 剣の世界
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――
フルダイブしてから数十分、漸く吟味に吟味を重ねて武器を選んだ私は<はじまりの街>を飛び出して、直ぐ近くの草原エリアにて剣での戦闘の練習をしようとした。
『はっ!』
小さな掛け声と共に、突き出された剣には僅かに光を帯びていて、私はその光に歓喜した。
『これがソードスキルかぁ!!』
フルダイブ型のゲームをプレイするのは初めてではなかったが、ここまでリアリティの高いものは初めてで私は立つはずのない鳥肌を感じた気がした。
――その後も何発かソードスキルの発動の練習をし、ソードスキルの爽快感に浸った。
『おっと…兄さんが来るまでに何体かモンスターも狩ってみるか…』
視界の端に表示されている時刻を確認して、私はモンスターがポップしている場所へと移動した。
――
『ふぅ…、結構練習できたかも…。もうここら辺のは狩りつくしたからリポップまでまたなくていいかな…』
私は初期モンスターである青いイノシシ(正式名は確か≪フレンジーボア≫)を練習台として、何度も狩った。
時刻を確認すると、桃里兄さんとの待ち合わせの時刻が近付いてきていた。
<はじまりの街>で購入した剣を鞘にしまうと、私は<はじまりの街>の方へと踵を返した。
――
『ここの宿屋でいいかな…』
<はじまりの街>に帰ってくると、私はダイブして来た人の眼に着きやすい場所の宿屋を見つけて、そこに入った。
NPCたちが注文を聞いたり、料理を運んだりと忙しなく動いているのを横目に見ていた。
それから数十分、桃里兄さんが来るのを待っていたのだが、いつになっても現れる気配がない。
『ここの宿屋じゃなかったのかな…。』
席を立ちがって宿屋を出た瞬間、突如リンゴーン、リンゴーンと鐘のような、あるいは警告音のような爆音が響き渡った。
『なっ、なに…!?』
咄嗟に耳を塞いで座り込んであたりを見渡すと、宿屋の前にいたプレイヤーも同じように耳を塞いでいて状況は一緒のようだった。
どういうことか、その人に聞こうと口を開きかけた瞬間、私や前の人の身体を白い光が包み込んだ。
どうなってるんだ、と口に出す暇も行動に起こす暇もなく、私の視界は白くフェードアウトした。