ヤマトヒメ
□No.2 スタートライン
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「受験番号、7111君、ナイスなお便りサンキューな。」
プレゼント・マイクは険悪な受験生の雰囲気をもろともせず、説明を続行する。
「4種目の敵は0ポイント。そいつはいわば、お邪魔虫。
各会場に1体。所狭しと大暴れしてるギミックよ。
倒せないことはないが、倒しても意味がない。
リスナーには上手く避けることをお勧めするぜ。」
「ありがとうございます!失礼いたしました!」
直角といえるほど、頭を下げて隣の席の彼は着席した。
「俺からは以上だ。最後にリスナーへ我が校、校訓をプレゼントしよう。
かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。
真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていくものだと!
更に向こうへ――
Plus Ultra!!!!
それでは、みんな良い受難を…。」
そう締めくくり、プレゼント・マイクによる実技試験の説明は終わった。
受験票に書かれた、演習会場へはバスで向かう。
持ってきた運動用のジャージに着替え、演習場のゲート前に立つ。
軽く屈伸や伸びをして準備体操をしていると、ゲートの横にある管制塔のような建物から、声がかかった。
「はい、スタート!!!」
≪ダッ≫
スタートと言われれば、それは開始の合図。
私はすぐさま地面を蹴り演習会場へと入って行った。
「どうした!?実践にカウントなんざねぇんだよ!
走れ走れ!もう賽は投げられてんぞ!!」
そんなプレゼント・マイクの言葉と先に行った私の姿を見て、ようやく他の受験者たちもゲートをくぐり、演習場内になだれ込んできた。
『(とにかく、少しでも他の人から離れたところへ…)』
私は演習場の端を目指して、街の中を走り抜けた。
≪ドゴッ!!≫
<標的捕捉…、ぶっ殺す!!>
『1P!!』
端へ向かっている途中で、突如街の建物の中から、1P敵が姿を現した。
後ろを振り返ると、まだ数名だが他の受験者がいたため、私は前に進むことを選んだ。
私に向かって繰り出された敵の拳を、ひらりと躱して、走り出す。
<待てェ!!>
躱されたことにより更にターゲットを私に絞ったようで、1P敵はそのまま私を追いかけてきた。
『好都合…!』
後を追いかけてくるならば、このまま距離を保ち、他の受験者から離れた場所で一気に片付けることにした。
その後も、2P敵に遭遇し、先ほどと同じように後を追いかけてくるよう、挑発し壁際に向かってひたすら走った。
『(今のところ、0Pの敵は見てない…。ここから遠い所にいるのかも…。)』
試験開始から数分、ようやく目指していた壁際が迫っていた。