circus -第二幕-

□#10 世界の種子
1ページ/6ページ





私はキリトと別れてからお風呂に入って、冷えた体を温めた。



都合がよく今日は父親も母親も帰りが遅いようで家には私一人だけだった。


しかし、一回母親が帰ってきたようで夕飯だけがテーブルの上に用意されていた。



『≪ゲームも程々にね…≫か…、バレてる…』



私は苦笑いを溢しながら、母親の用意してくれた夕食を手早く済ませ、片付けた。



片付けを済ませると、私は自室に戻り、暖かい恰好をして外に出た。




向かう先は親友の元…が良かったが、一応囚われていた従兄の存在も気になるため、先に従兄がいる病院へと向かった。



時間も時間なだけにタクシーを呼ぶと、怪訝そうな顔の運転手がいた。



病院の名を告げると、何か自己解釈したのか、何も言わずにタクシーは出発した。




親友の元へは先ほど立ち寄ったキリトが先に行っていることだろう。


東京のとある病院に着くと、私は裏門から病院に入り、慣れた手つきで通行証を発行し、従兄の病室へと急いだ。



≪コンコン≫



夜だったため、小さくノックすると、中から返事がした。



返事が来たことに感動していると、ゆっくりと扉を開けた。



カーテンを開けると、そこにはすっかり痩せて頬が痩せこけた顔のトウリがいた。



『トウリ!!』



思わず、抱き着くと、トウリは上半身がふらりと傾いたが、なんとか踏ん張った。



「おいおい、俺は病人だぜ?」



『よかった…戻ってきて…本当に…』



涙を流す私にトウリは優しく髪の毛を撫でた。



「アスナの方はどうなんだ?」



『キリトが向かったよ。まだどうなったかメールで確認してないけど…』



携帯端末を覗いてみても何もメールは届いていなかった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ