circus -第二幕-

□#08 絆
1ページ/8ページ





「(あの頃から俺は目の前の家族の距離感さえ、よく分らなくなってしまった。俺はこの家の本当の子供ではない。
そのことを知ったのは10歳のことだった。
この人は本当は誰なんだろう?俺はこの人のことを本当に知っているのか、その違和感が俺をネットゲームに向かわせた一つの理由なのかもしれない。
誰もがお互いのことを本当に知らない。偽りの世界、そんな心地よい場所に俺は端的していった。
だが、SAOの2年間は俺を一つの心理へと導いた。現実世界も仮想世界も本質的には変わらない。
その人が誰かという疑問に意味はない。
できるのはただ、信じ受け入れるだけ。
自分の認識する誰かが、本当のその人なのだから。)」



和人は直葉の部屋の扉に背を任せてずるずると座り込んだ。



「(現実に帰還した俺は、スグの顔を見て、素直に嬉しいと感じた。
俺は誓った。この数年間でスグとの間に生まれてしまった距離感を全力で取り戻そうと…。
でも、俺は…。俺がスグにできること…。)」




和人はゆっくりと立ち上がると、直葉の部屋のドアをノックした。



「スグ。アルンの北側のテラスで待ってる。」



和人はそれだけ告げて部屋へと戻って行った。




――――アルンの北側のテラスにて




『ちゃんと話してきた?』



「ん…、いや…できなかった。ごめんって謝ることしかできなかった。」



『もう…何をしてんだか…、兄貴はちゃんとしなくちゃ。』



「兄貴って言っても俺はスグの従兄で…。」



キリトのその言葉にモモとトウリは顔を見合わせた。



『それって私とトウリと同じじゃない。』



「えっ…?」



『私たちも従兄同士なのよ。でも、それぞれその家族によって形は違えど、家族の形があると思うの。それが例え、本当の兄妹じゃなくても。それがキリトの家の家族の形なんだから。胸を張りなさい。直葉ちゃんは自慢の妹だって。』



「モモ…。ああ、そうだな。」
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ