circus -第一幕-

□#18 奈落の淵U
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――――翌日



『ほら、いつまでもくよくよしてない!起きなさい!』



「だって…まだ2週間なんだぜ?」



『休暇中の私たちを前線に召集するなんて、よほどのことだよ。』



「そりゃそうだけど…。」


『話だけでも聴いておこうよ、ね?』



キリトは深呼吸をして深い溜息を吐くと起き上がった。



『話聞いて早く帰ってこよ?』


「ああ、そうだな。」



――――2024年、11月7日
第22層、コラル




「お見送り、ありがとうございます。短い間でしたが、楽しかったです。」



「いやはや、貴重な体験でした。実はお二人に出会うまで、ゲームクリアに挑んでいる方々がいるのを、別世界のように考えておりまして…。
この世界に放り出されて2年…。今更帰ったところで会社に戻れるか分からない…。
内心…もうここからの脱出を諦めていたかもしれませんなぁ…。
それならいっそここで竿を振っていたほうがマシだと…。情けない話です…。」



「そんな…そんなことは…!」



『私も最初は宿屋に引きこもって怯える毎日を過ごしていました。そこから抜け出すきっかけを与えてくれたのは、私の従兄で…。
そしてこの世界の楽しみ方を教えてくれたのがまぎれもないキリトでした。
ある日広場の近くの芝生の上で寝ている彼を見つけて。一緒に寝てみたら、久々にぐっすり眠れたような気がしたんです。
それで私気付いたんです、現実世界で1日失くすんじゃなくてここで1日1日を積み重ねているんだって。
彼を思いながら寝ると嫌な夢を見なくなった。彼に会えるのが楽しみになった!
初めてここにきて良かったって思えたんです。
キリトは私にとってここで過ごした2年間であり、生きた証です。私はこの人に出会うためにあの日、ナーヴギアを被ったんです!』
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