circus -第一幕-
□#17 奈落の淵
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――2024年、11月5日
第61層、セルムブルグ
『久しぶり、アスナ!』
「久しぶりね、モモ!!」
私は今、久しぶりにアスナの家に来ていた。
旦那に当たるキリトはお留守番と称して、釣りに行かせていた。
「おうおう、モモ、俺もいるんだけど?」
『はいはい、久しぶりね、トウリ』
「俺だけ扱い、雑じゃね?」
「ふふっ、やっぱり仲良いわね、妬けちゃうわ。」
『昔馴染みなだけだから、大丈夫だよ、アスナ。』
私はここ数日で起きたユイのことなどをアスナたちに話した。
二人は驚愕して最初は誰も口を開かなかったが、アスナが絞り出すように話し始めた。
「モモはその子のことを愛していたのね?」
『うん…、大事な娘だよ…』
「そっか…。」
「よし!モモ、気分転換にまたショーに出てみないか?」
『そういえば最近はめっきり出なくなっちゃったし、収入も欲しいからなぁ…。今夜出てもいいかキリトにメッセージ送ってみる。』
そういって私はキリトに"今夜久々にショーに出てもいい?"とメッセージを送った。
返事が来るまでの間、私はアスナと他愛無い話をしていた。
≪ぴこん≫
軽快なサウンドと共にメッセージの受信を知らせるアイコンが出た。
『キリトから返事来たみたい。えっと…、今夜は無理かも…。』
苦笑いを溢しながらいうとトウリが露骨に嫌な顔になった。