circus -第一幕-
□#04 黒の剣士
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ーーー2024年、2月
第35層
今夜も私たちはプレイヤーで賑わう酒場でショーをしていた。
「レディース&ジェントルマン!今宵も我々のショーをご覧あれ!」
トウリの言葉にプレイヤーたちからは歓声が上がる。
まずはトウリがたまに乗りながらのボールジャグリング。
そして他の団員も次々に演目をこなしていく。
いよいよ私の番だ。
「さぁさぁ、皆さんのお目当はこの子じゃないか!?サーカスの紅一点、モモのナイフショー!」
私はダガーナイフを三本用意してくるくると踊るようにステップを踏みながら三本のナイフをジャグリングで回していく。
ピエロの仮面を被りながら見つけたのだが、少し離れた席にキリトと見慣れない女の子が一緒に座ってこっちを見ていた。
私の視線から気づいたのか、トウリはニヤリと笑うとこんなことを言い出した。
「今宵はプレイヤーの皆さんにも参加していただきましょう!さぁ、奥の席の黒ずくめのお兄さん、前へどうぞ!」
迎えに行くように奥の席へ進むトウリを見ながら私はジャグリングを続ける。
「えっ、お、俺?」
「き、キリトさぁん…」
「だ、大丈夫だから!」
連れの女の子がアワアワとしているが、キリトがトウリに気付き、慌てて笑顔を貼り付けて女の子を安心させようとした。
ーーーーモヤ
『……?』
なにこのもやっとした感じ。
『(ま、いっか)』
一瞬のもやっとした気持ちを払拭するように頭を振るとこちらにやってきたキリトに助けの目線を食らうが助けられない、とばかりに私は視線を逸らした。